米国はムジャヒディーンの地に迷い込み足を取られた(カブール郊外で。写真:筆者撮影)
冷戦崩壊後、世界で唯一つの超大国となった米国のそれも経済と政治の中枢が攻撃された「9・11テロ」から8年が経つ。
世界を震撼させた事件の発生からわずか1ヵ月後に米軍は、テロ攻撃の首謀者とされるビン・ラディンが潜伏するアフガニスタンに侵攻した。ロシアの協力を得たことなどもあり、それから1ヵ月後、米軍はアフガンの首都カブールを陥落させた。冷戦時代、覇権を争っていたロシアは、チェチェン問題を抱えており、共通の敵イスラム勢力を叩きたかったことから米国に協力したに過ぎなかった。
タリバーンも戦術的に一旦、兵を引いただけだ。ブッシュ政権(当時)には、世界最強の軍事力を持ってすればアフガン一国くらい手もなく制圧できるという、大いなる勘違いがあった。16ヶ月後(2003年3月)には「大量破壊兵器が隠されている」という口実でイラクにも侵攻した。
米国は2方面で泥沼にはまり込んだ。米国に追随した西側諸国も否応なく引き摺り込また。巨額の戦費調達のために市場原理主義というイカサマ経済は実に好都合だった。限度を超えて大きく膨らんだ風船(バブル)が弾けるのにさほど時間はかからなかった。
2008年9月、イカサマの本丸ともいえる証券大手のリーマン・ブラザーズが破綻。風船を膨らます空気の役を務めていた日本経済も一緒に弾き飛ばされた。もたらされた惨禍は改めて記すまでもない。
ブッシュ政権の反省に立って登場したオバマ政権はイラクからは撤退した。だがアフガンからは引き揚げることができずにいる。戦況は悪化する一方であるにもかかわらずだ。ベトナム戦争同様、負け戦となるのは必定である。開戦当時、ロシア軍の将校が「アフガンと比べたらベトナム戦争なんてピクニックだ」と嘲るように言っていたが、すでに予想通りとなっている。
オバマ政権がアフガンから撤退できない理由のひとつとして軍産複合体を抑えきれていないことがある。「米国及び米国人がテロに遭わないために巣窟のアフガンで封じ込める」と云うのは、こじつけだ。屁のつっぱりにもならないことは当のオバマ大統領とホワイトハウスが知り抜いている。
オバマ大統領が導入しようとしている「国民皆保険制度」は、軍産複合体に支配される米経済の中枢を占める金融・保険業界の猛抵抗に遭っている。「国民皆保険制度」導入に漕ぎ着ければアフガンからの撤退の糸口も見えてくる。
米国では市場原理主義が復活の兆しを見せているというが、再び風船(バブル)を弾けさせようというのだろうか。日本をはじめ世界経済が混迷から脱出するには、先ず米国がアフガンから撤退できるように協力することだ。