100基を下らない報道カメラの放列が敷かれた。「ニコ動」は禁止が解除されるまで録画のみで放送する覚悟だった(14日、代表選会場=港区=。写真:筆者撮影)
14日に行われた民主党代表選挙をめぐって、党本部の広報担当者が「ニコニコ動画」にインターネット生中継の禁止を伝えていたことがわかった。
先週末、「ニコニコ動画」の七尾功・政治部長の携帯に民主党役員室で広報を担当する某氏から電話がかかってきた。「代表選のネット生中継はできないからね」と。
民主党は政権交代前から記者会見のオープン化を掲げ、これまでネットやフリー記者の取材・報道の自由を認めてきた。にもかかわらず、突如の方針転換である。政権与党による“お達し”は到底納得が行くものではない。
七尾部長から事態を聞いた筆者がそれをツイートしたところフリー記者たちの間に一気に広まった。ジャーナリストの上杉隆氏らが何人もの民主党議員に掛け合い、担当者に圧力をかけてもらった。結果、「ネット生中継の禁止」は解除された。
禁止の解除がニコ動側に伝わったのは代表選挙が始まるわずか15分前である。それも広報担当者からではなく、上杉氏が現場で七尾氏に「生中継できるようになったよ」と告げたのである。
「ネット生中継の禁止」を七尾部長に伝えた広報担当者は筆者の電話取材に「民主党本部が独自でネット生中継をやるため」と説明した。
代表選挙の開始は午後2時、新代表が決まるのは4時である。地上波テレビ在京キー局が夕方のニュースを開始するのは5時である。テレビ朝日などは一時間繰り上げていたが、それでも午後4時からだ。
テレビ局にしてみればネットに先を越されたのではたまったものではない。視聴率=営業収入に響く。TBSは苦肉の策として自らで代表選のUSTREAM中継を行い広告宣伝をつけたほどだ。それでもTBSによるネット生中継は規制されなかったのである。「ニコ動」はダメでTBSなら良いのだろうか。
近年、国民のテレビ離れが進み経営が厳しさを増すテレビ局にとってネット生中継は目の敵である。総務省の記者クラブがフリー記者によるネット生中継を禁止しているのは象徴的な例だ。
「テレビ局からの働きかけ(圧力)はなかったのか?」との筆者の問いに対して件の広報担当者は「それはなかった」と否定した。
別の広報担当者は「手続きに齟齬があった。ネットメディアを排除するつもりはない」としたうえで「テレビ局はね、インターネットが入るのを嫌がるんですよ」と実情を明かした。
代表選挙を生中継したニコニコ動画(録画視聴も可能)には30万人(15日午後3時現在)がアクセスした。記録的な数字という。「ニコ動」一社でこのアクセス数である。ネット界最大のアクセス数を持つグーグルも動画生中継を近く始める予定だ。先ず「ニコ動」を叩いておきたい民放の事情も分かるが、大河の流れを止めることは無理だろう。
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