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2010年07月31日

派遣労働者たちのジリジリと暑い夏


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違法派遣の取り締まりを厚労省に要望する全国ユニオンの鴨桃代委員長=手前から2人目の女性(30日、参院議員会館。写真:筆者撮影)


【ハケンという蟻地獄】
 派遣労働者にとって2010年の夏は、これまでになくジリジリと身を焦がす暑い季節となっている。

 昨年6月、当時野党だった民主党、国民新党、社民党は「日雇い派遣」と「製造業への労働者派遣」を禁じる「3党合意」を結び、8月の総選挙で政権の座に就いた。

 不安定雇用の温床である「日雇い派遣」と労働者を部品のひとつとして扱う「製造業への派遣」を法律で禁止するというのである。派遣労働者たちは貧困と不安から解放されるとして歓迎した。政権党の民主党がスローガンに掲げていた「国民の生活が第一」にも適う。

 だが派遣労働者の希望は一年も持たなかった。民主党内のゴタゴタや社民党の連立政権からの離脱などで「労働者派遣法の改正」は通常国会で成立しなかったのである。そして参院選での民主党の大敗。議席数で野党が上回る「ねじれ国会」となっため「3党合意」の効力は、大きく薄れた。

 最大野党の自民党とみんなの党は、派遣労働は必要との立場から派遣法の改正に真っ向から反対している。派遣法の改正は危うい状況なのである。

 「一昨年末、数万人単位の労働者が職と住居を同時に失った「派遣切り」の惨事を繰り返してはならない」。派遣労働者のユニオンは、野党の巻き返しに遭う前に行政権限の範囲内で、悪しき現状に少しでも歯止めをかけようと厚労省との交渉を続けている。

 30日には参院会館で労働基準局監督課の担当者らと話し合いを持った。ユニオン側は実例を挙げて「『違法派遣、偽装請負』の取り締り」などを求めたが、厚労省側は「法令違反があれば……」と明確な答えを避けた。毎度繰り返される光景だ。

 経営者側のためにあった労働法制と労働行政を、労働者側のものに変える。生活苦にさらされる非正規労働者が政権交代に期待したのは、この大転換だった。

 「労働者派遣法の改正」を成立させるために残されている戦術は数少ない。政界関係者によれば、公明党と共産党を抱き込む方法があるという。
posted by 田中龍作 at 13:36| Comment(0) | TrackBack(1) | 派遣 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月09日

秋葉原通り魔事件から2年〜「あの頃と変わっちゃいない」


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凶行の現場には慰霊の花束を手向ける人が後を絶たなかった【8日、神田2丁目交差点で。写真:筆者撮影】


【ハケンという蟻地獄】

 ダガーナイフを持った男が秋葉原の歩行者天国で17人を殺傷した「通り魔事件」から2年が経つ。凶行に及んだ加藤智大被告(27才)が自動車工場で働く派遣社員だったことから、当時は派遣社員を危険人物視したり派遣会社を悪役扱いする報道が目についた。大手メディアは、自動車工場がトヨタの関連会社ということを「素通り」した。
 
 無理もない。新聞社やテレビ局で無差別殺傷事件を取材するのは警察詰め(サツ回り)の記者だ。派遣労働者の実情など知る由もない。実情を知っていてもトヨタ批判につながることは、大手メディアにできっこない。

 メーカーで働く派遣労働者のユニオンである「ガテン系連帯」には各社の事件記者からの電話が引きも切らなかった。対応した同連帯の小谷野毅事務局長は「記者さんたちは派遣の仕組みや実情を知らない。一から説明しなければならない」と肩を落とした。事件発生から10日後、「ガテン系連帯」はメディアへの説明会を開くことになった。

 小谷野事務局長は派遣のしくみを鵜飼に喩えた。「鵜匠が企業、鵜が派遣会社、労働者が鮎なんです」と。当時のマスコミ論調は鵜(派遣会社)と鮎(派遣労働者)に批判が集中しがちだった。
 同事務局長は「本当に儲けて鮎(派遣労働者)を苦しめているのは鵜匠(企業)なんです。経団連なんです」と力説した。。

 メーカーへの派遣が解禁される2004年以前、自動車工場で働く期間工は直接雇用だった。派遣会社のピンハネ(30〜40%のマージン)はないので、そこそこの収入になった。メーカー側に雇用責任があったので、労基法は原則として守られた。

 ところが2004年の法改正で状況は一変する。メーカーは「派遣」を利用して都合の良い時だけ労働力を調達できるようにしたのである。増産態勢に入れば派遣労働者を多く「調達」し、減産に入れば「切る」。実際、派遣会社に払う賃金は資材調達部門が賄うのである。

 こうして労働の「ジャスト・イン・タイム」が作り上げられた。派遣労働者は簡単に首を切られ、働いている間も賃金を派遣会社に30〜40%もピンハネされながら骨をきしませた。

 にもかかわらずマスコミは「派遣の非人間的な労働システム」を積極的に解き明かすことはしなかった。派遣を使って一番うまい汁を吸っているトヨタや家電メーカーを叩かなかった。正確に言えば叩けなかった。
 
 その年の晩秋、日本の製造業は米国発世界同時不況の波をもろに受けた。「派遣切り」の嵐が吹き荒れ、職と住まいを共に失った労働者たちが日比谷公園の「派遣村」にたどり着いた。

 ここでも一部のメディア、評論家は期間工と派遣労働者の区別もついていなかった。「年収600万円の期間工がなぜ派遣村に来てるのか?」などと事実を踏まえないまま論評した。

 事件後休止されていた秋葉原の歩行者天国は、近く再開される見込みだ。2周年の日となる8日、凶行の現場となった神田2丁目の交差点には慰霊の花束を手向ける人が後を絶たなかった。

 合掌していた男性(20代)は「社会も派遣もあの頃(事件当時)と何も変わっちゃいない。歩行者天国を再開したらもっと大きな事件が起こるのではないか」と眉間にしわを寄せた。

 不安定雇用と貧困の元凶である「製造業への派遣」「登録型派遣」の原則禁止を2本柱にした「労働者派遣法の改正」は、今国会での成立が絶望的だ。「山椒太夫」の世界が合法な状態はしばらく続きそうだ。

 ◇
【読者の皆様】

 いつも拙稿をお読み頂き有難うございます。私儀、田中龍作は現場で見聞きし肌で感じたことを皆様に報告する現場主義を貫いてまいりました。ところが原稿料を頂戴していた会社が現下の不況で事実上倒産し、取材費を賄うことが不可能な事態となりました。
 
 貯金も底をつき、取材を続けることが難しくなっております。コンビニなどでアルバイトをすることも考えましたが、日々激動する政治や社会問題をカバーする時間が取れないことが判明しました。誠に勝手な御願いであることは重ね重ね承知しておりますが、基金を立ち上げることと致しました。救いの手をお待ちしております。

 使途は毎月報告致します。一人でも多くの方に読んで頂くため、会員制をとることは致しません。特定団体等からの資金提供などを受けず、不偏不党の立場を貫くためにも皆様のお力を頂戴し、紙面を充実させたいと考えております。1円からでも10円からでも結構です。心より御願い申し上げます。

名称:『田中龍作の取材活動支援基金』
   (タナカリュウサクノシュザイカツドウシエンキキン)

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記号:10180  番号62056751


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【店名】ゼロイチハチ・0一八(「ゆうちょ銀行」→「支店名」を読み出して『セ』を打って下さい)

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2010年06月02日

危うし「派遣法改正」〜鳩山辞任で混乱


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「派遣切りを許すな」。シュプレヒコールをあげる非正規労働者たち【2日、国会で。写真:筆者撮影】


【ハケンという蟻地獄】
 「コンクリートから人へ」は「最低でも県外」と同じように掛け声倒れだったのか。鳩山総理の辞任に伴う政治混乱で「改正・労働者派遣法」の今国会での成立が危うくなってきた。

 同法案を審議する厚生労働委員会の野党理事によれば「与党理事が『継続審議』にすると言った」と話す。一方で「派遣法改正」は「郵政改革法案」とセットになっており、強行してでも今国会であげるとの見方も与党内にある。
 
 労働者派遣法の改正は08年末、大量の非正規労働者が職と住まいを同時に失った派遣切りの惨劇を繰り返さないために連立3党が合意して、今国会に提出していた。
 
 派遣法改正の背骨は「登録型派遣」と「製造業への派遣」の原則禁止だ。仕事がある時だけ雇用関係を結ぶ「登録型派遣」は不安定雇用の象徴だった。「製造業への派遣」はメーカーの生産計画に翻弄される。

 ただ、改正新法は実施まで猶予期間が3〜5年もあり、常時雇用の定義があいまいなため事実上は有期雇用であっても規制できない。また「派遣先で違法・違法行為があった場合は直接雇用が義務付けられる」ことになっているが、派遣元(派遣会社)の条件に基づいての雇用だ。「改正派遣法」は抜け穴だらけなのである。

 とはいえ『山椒大夫』の世界を合法化していたこれまでの派遣法と比べれば、派遣労働者の地位は格段に向上する。このため大方の派遣労働者は法改正を歓迎した。
 
 今国会の会期末は16日。首班指名までの空白と土日をのぞくと、実質7日間しかない。「郵政改革法案」は国民新党の一丁目一番地で、民主党も選挙で郵政票は頼みの綱だ。「労働者派遣法」は基地問題に次ぐ社民党の重要法案だ。「郵政法案」は社民党の協力がなければ参院で可決されない。民主党は「郵政」を通すには、「派遣」も成立させなければならないのである。

 ただ、大労組を抱える民主党には派遣法改正を歓迎しない勢力もある。鳩山辞任に伴う党内混乱で「派遣」がセットから外れる恐れもある。また参院選挙の結果しだいでは連立政権に派遣法改正に反対する政党の参加も十分予想される。来週前半までは予断を許さない状態が続きそうだ。

 神奈川県在住の男性(50代)は、グッドウィルが廃業したため、勤務先の運送会社と直接雇用になった。「毎日仕事があり、月収(手取り)は15万円も増えた」と顔をほころばせた。    
 
 「派遣はなくなった方がいいんですよ」。切々と語った男性(41歳・都内在住)の言葉を国会に届けたい。

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【読者の皆様】

 いつも拙稿をお読み頂き有難うございます。私儀、田中龍作は現場で見聞きし肌で感じたことを皆様に報告する現場主義を貫いてまいりました。ところが原稿料を頂戴していた会社が現下の不況で事実上倒産し、取材費を賄うことが不可能な事態となりました。
 
 貯金も底をつき、取材を続けることが難しくなっております。コンビニなどでアルバイトをすることも考えましたが、日々激動する政治や社会問題をカバーする時間が取れないことが判明しました。誠に勝手な御願いであることは重ね重ね承知しておりますが、基金を立ち上げることと致しました。救いの手をお待ちしております。

 使途は毎月報告致します。一人でも多くの方に読んで頂くため、会員制をとることは致しません。特定団体等からの資金提供などを受けず、不偏不党の立場を貫くためにも皆様のお力を頂戴し、紙面を充実させたいと考えております。1円からでも10円からでも結構です。心より御願い申し上げます。

名称:『田中龍作の取材活動支援基金』
   (タナカリュウサクノシュザイカツドウシエンキキン)

■郵便局から振り込んで下さる場合
口座; ゆうちょ銀行

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■銀行から振り込んで下さる場合
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【店名】ゼロイチハチ・0一八(「ゆうちょ銀行」→「支店名」を読み出して『セ』を打って下さい)

【店番】018 【預金種目】普通預金 【口座番号】6205675
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