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2009年12月02日

アフガン駐留米軍3万増派、2011年夏撤退開始

 
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アフガン国軍兵士。アルカイーダを相手にできるとは思えないほど人の好さそうなオッサンだった(カブール郊外で。写真=筆者)


 米国のオバマ大統領が苦渋の決断を下した。アフガニスタン駐留米軍を3万人増派する一方で、2011年7月から撤退を開始することを正式発表したのである。

 初めて出口戦略を盛り込んだオバマ政権の新しいアフガニスタン政策の骨子は以下―

・半年以内に増派する。
・増派部隊は戦闘用員とアフガン国軍指導用員。
・戦闘用員はタリバーン勢力の強いカンダハール州とヘルマンド州に展開する。
・パキスタンとの連携強化。
・駐留米軍は2011年7月から撤退を開始する→アフガン国軍に治安権限を移譲。

 過半数の国民と身内の民主党が反対するアフガン駐留米軍の増派を発表したオバマ氏は、開戦に至った理由から説き始めた。「米国の政治経済の中枢を攻撃した『911テロ』を実行したのはアルカイーダだったが、その基地がアフガニスタンだった」と。

 アルカイーダは現在、パキスタン国境の部族地帯やパキスタン国内に潜伏しているとされている。オバマ氏が「パキスタンとの連携強化」を挙げたのはこのためだ。さらに深刻な理由がある。パキスタンが核保有国であることだ。オバマ氏は「アルカイーダが核ジャックを企てていることは周知の事実だ」と強調する。アルカイーダの力を削ぐには、パキスタンの協力が不可欠というわけだ。

 オバマ氏は「米軍撤退後の治安対策」についても方針を述べた。「アフガニスタンの治安はアフガニスタン人自身が責任を持つべきだ」として、米軍はアフガン国軍の指導を強化する。

 給料がタリバーン兵の半額しかない国軍兵士の士気は低い。精強なタリバーンやアルカイーダを前にして治安を維持できるだろうか。極めて疑問だ。オバマ政権の出口戦略は明快とは言えないようだ。

【イスラム世界との良好な関係目指すオバマ氏】

 オバマ氏は「相互の利益を考えることが紛争の連鎖を断つ」との理由から「米国とイスラム世界との関係構築に力を注ぐ」とも語った。ブッシュ前大統領に大きな影響を及ぼしていた「キリスト教福音派」的思想との決別だ。福音派はネオコンと呼ばれる人たちの思想的基盤である。

 イスラム教徒の聖地であるアルアクサの丘を更地にしてユダヤ神殿を再建すれば、キリストが再降臨すると思い込んでいるのが福音派の人々だ。当然イスラム教徒を敵視するようになる。

 イラク戦争とアフガン戦争は石油利権、天然ガスパイプライン敷設の思惑などが背景にあったが、イスラム教徒を敵視する思想が根底にあったことも否めない。
 その点、イスラム世界と良好な関係を築こうとするオバマ氏の姿勢は評価できる。

 アフガニスタン戦争は、無辜の市民に多大な犠牲者を出して、戦域をパキスタンにまで広げ、治安を悪化させただけだった。ブッシュ政権の負の遺産は余りにも重い。景気後退にあえぐ米国の経済再建とアフガン戦争の続行は両立不可能だ。オバマ大統領が十分な出口戦略を示せないまま、撤退時期を明示しなければならない事情だった。
posted by 田中龍作 at 19:47| Comment(0) | TrackBack(0) | アフガニスタン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【第1報】オバマ大統領「アフガン駐留米軍3万強増派」正式発表

 オバマ大統領は2日午前(日本時間)、ウエストポイント=陸軍士官学校=で「アフガニスタンン駐留米軍を3万以上増派する」と正式発表した。増派の規模が3万以上に上ることは、ホワイトハウス当局者がこれまでにリークしていたが、大統領の口から公にされたのは初めてだ。

 クリントン国務長官、ゲーツ国防長官の見守るなか、オバマ氏は出口戦略も含めて35分間に渡って演説した。

 アフガン駐留米軍の規模は現在6万8千人だから1・5倍もの大増派である。国民や議会の反発は必至だ。


読者の皆様、
詳報を入手し次第、記事に致します。
posted by 田中龍作 at 10:13| Comment(0) | TrackBack(0) | アフガニスタン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月27日

ドイツ将軍、アフガン誤爆隠匿で辞任〜米軍増派にも影響〜

 
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強盗事件が頻発するジャララバード街道をカブールに向かうタンクローリー(アフガン東部のナンガラハール州で。写真=筆者)

 
 9月、アフガニスタン北部のクンドゥズ州で起きた民間人への誤爆をドイツ国防省が秘匿していたとされる事件で、議会の追及が厳しさを増し、制服組トップと国防省高官が26日、辞任した。
 辞任したのはシュネイダー将軍と国防省高官のピーター・ウィーチャート氏。

 事件の経緯はこうだ―
 9月4日、クンドゥズ州でガソリンを積んだタンクローリーがタリバーンに襲撃され乗っ取られた。同州を管轄するドイツ軍指揮官のジョージ・クレイン大尉は、部隊にタンクローリーへの空爆を命じた。

 「空爆により非戦闘員にも犠牲者が出た」とメディアが報じ、アフガニスタン政府は犠牲者は少なくとも100人、うち30人は非戦闘員と発表した。
これに対してフランツ・ジョセフ・ジャン国防大臣(当時)は議会の追及に「タリバーンを殺害しただけだ」と繰り返していた。

 だが機密文書の存在が明らかになる。「ジャン国防大臣は非戦闘員に犠牲者が出ていたことを知っていた」という内容だ。

 機密文書はさらに衝撃の事実を明かす――空爆の数時間後、クンドゥズ駐留のドイツ軍部隊に病院から「(誤爆された)市民を治療している」との連絡があった、というのだ。
 
 ジャン前国防大臣は「(制服トップの)シュネイダー将軍から報告を受け議会にはすべて話している」と主張する。だが議会で証言している内容と、機密文書が明らかにしている事実は正反対だ。

 情報の流れは「駐留部隊→本国の軍・国防省→国防大臣」となる。どの段階で誰かがウソをついている。あるいは機密文書がウソで塗り固められているか。

 制服組トップの将軍と国防省の高官の辞任は、少なくとも機密文書がデタラメではないことを示しているようだ。

 ドイツ議会は増派を認めるか否かを審議している最中だ。またアフガン駐留をさらに一年延期することについての正式承認を来月に控える。アフガン戦争で重要な位置を占めるドイツ軍の動向は予断を許さない状態だ。

 ドイツ軍はアフガニスタンに4千300人を駐留させており、部隊規模は米、英に続いて3番目に大きい。ドイツ軍が増派を見送る事態となれば、来週早々にも正式発表が予定されている米軍の増派にも影響を与えそうだ。
posted by 田中龍作 at 23:39| Comment(0) | TrackBack(0) | アフガニスタン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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