文字サイズ

田中龍作ジャーナルはサイトのアドレスが変わりました。
新サイト最新記事 (http://tanakaryusaku.jp/



2009年10月12日

岡田外相アフガン訪問への疑問符

写真
カブール市内を走り回る武装警察。こんな治安情勢下での職業訓練にどれほどの効果があるのか(写真=筆者撮影)


 岡田克也外相が12日、アフガニスタンを訪問した。元タリバーン兵などへの職業訓練プログラムの実施をカルザイ大統領に打診した、という。鳩山政権は「インド洋上での給油は単純延長しない」との方針を表明していることから、それに代わるものとして「職業訓練」が出てきた。だが安易に過ぎはしないだろうか。

 というのも国連が03年からアフガン復興を目指して現地で行ったDDR(Disarmamennt.Demobilization.Reintegration=武装解除・動員解除・社会復帰)は失敗しているのである。原因はタリバーンを武装解除できなかったためだ。日本はDDRの資金全体の4分の3にあたる9100万ドルも出費している。Reintegration(社会復帰)は、職業訓練だった。

 03年当時よりもタリバーンの勢力がはるかに増強している現状を考えれば、また失敗することは目に見えている。今になって元タリバーン兵に職業訓練をして何になる、というのだ。

 タリバーン政権(1996〜2001年)と交渉を続けてきた元国連関係者は筆者に「今となっては職業訓練は遅い」と明かした。元国連関係者は岡田外相の出発直前にあたる9日、外務省に招かれ同様の指摘をした。にもかかわらず外相はカルザイ大統領に「職業訓練」を提案したのである。一度思い込んだらテコでも動かないのは、岡田氏が「原理主義者」と言われるゆえんでもある。

 内戦で国土が破壊される前のアフガニスタンは、農産物が国の富の半分を占める農業国だった。戦闘の際、カレーズと呼ばれる農業用水路が塹壕として使われた。雨あられのごとく砲弾が撃ち込まれ用水路はズタズタとなり、田畑は枯れた。

 アフガンを復興させるには農業を復興させることだ。田畑を再び水で潤すことである。井戸を掘り、大河の水を田畑に引き込む支援活動を続けていたのが「ペシャワール会」だった。水が供給されるようになり、畑から農作物が採れるようになった。衛生状態も改善され病気も減った。

「ペシャワール会」は現地の人々から絶大な信用を得るまでになった。それゆえ米国には厄介な存在に映ったのだろう。代表の中村哲医師は幾度も米軍機の「誤爆」を受けている。誤爆と称する威嚇だ。

 一昨年11月、民主党代表団はアフガンを視察する予定だった。だが直前になって政府の横ヤリが入り中止に追い込まれた。「ペシャワール会」に親しい政治家のルートで入ろうとしたことが、米国一辺倒だった日本政府を刺激したのである。

 米石油メジャー「ユノカル社」の取締役だったカルザイ大統領は、ブッシュ前政権が米国の代理人としてインストールした人物に過ぎない。実弟はアフガンを暗黒国家たらしめている麻薬の密売王だ。

 この国を隅々まで腐敗させている汚職の総元締めがカルザイ大統領であるとも言われる。オバマ政権にとっては負の遺産なのだが、とって代わる人物がいないため大統領に留め置いているに過ぎない。

 こんなどうしようもない大統領に会うのは、ブッシュ前政権を今だに認めているようなものだ。しかも一度失敗している職業訓練を提案してどうしようというのだ。冷静で論理的な岡田外相には再考を促したい。
posted by 田中龍作 at 16:33| Comment(0) | TrackBack(0) | アフガニスタン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年09月11日

「9・11テロ」から8年、混迷からの脱出を

写真
米国はムジャヒディーンの地に迷い込み足を取られた(カブール郊外で。写真:筆者撮影)


 冷戦崩壊後、世界で唯一つの超大国となった米国のそれも経済と政治の中枢が攻撃された「9・11テロ」から8年が経つ。

 世界を震撼させた事件の発生からわずか1ヵ月後に米軍は、テロ攻撃の首謀者とされるビン・ラディンが潜伏するアフガニスタンに侵攻した。ロシアの協力を得たことなどもあり、それから1ヵ月後、米軍はアフガンの首都カブールを陥落させた。冷戦時代、覇権を争っていたロシアは、チェチェン問題を抱えており、共通の敵イスラム勢力を叩きたかったことから米国に協力したに過ぎなかった。

 タリバーンも戦術的に一旦、兵を引いただけだ。ブッシュ政権(当時)には、世界最強の軍事力を持ってすればアフガン一国くらい手もなく制圧できるという、大いなる勘違いがあった。16ヶ月後(2003年3月)には「大量破壊兵器が隠されている」という口実でイラクにも侵攻した。

 米国は2方面で泥沼にはまり込んだ。米国に追随した西側諸国も否応なく引き摺り込また。巨額の戦費調達のために市場原理主義というイカサマ経済は実に好都合だった。限度を超えて大きく膨らんだ風船(バブル)が弾けるのにさほど時間はかからなかった。

 2008年9月、イカサマの本丸ともいえる証券大手のリーマン・ブラザーズが破綻。風船を膨らます空気の役を務めていた日本経済も一緒に弾き飛ばされた。もたらされた惨禍は改めて記すまでもない。

 ブッシュ政権の反省に立って登場したオバマ政権はイラクからは撤退した。だがアフガンからは引き揚げることができずにいる。戦況は悪化する一方であるにもかかわらずだ。ベトナム戦争同様、負け戦となるのは必定である。開戦当時、ロシア軍の将校が「アフガンと比べたらベトナム戦争なんてピクニックだ」と嘲るように言っていたが、すでに予想通りとなっている。

 オバマ政権がアフガンから撤退できない理由のひとつとして軍産複合体を抑えきれていないことがある。「米国及び米国人がテロに遭わないために巣窟のアフガンで封じ込める」と云うのは、こじつけだ。屁のつっぱりにもならないことは当のオバマ大統領とホワイトハウスが知り抜いている。

 オバマ大統領が導入しようとしている「国民皆保険制度」は、軍産複合体に支配される米経済の中枢を占める金融・保険業界の猛抵抗に遭っている。「国民皆保険制度」導入に漕ぎ着ければアフガンからの撤退の糸口も見えてくる。

 米国では市場原理主義が復活の兆しを見せているというが、再び風船(バブル)を弾けさせようというのだろうか。日本をはじめ世界経済が混迷から脱出するには、先ず米国がアフガンから撤退できるように協力することだ。
posted by 田中龍作 at 10:52| Comment(0) | TrackBack(0) | アフガニスタン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月03日

アフガン駐留米軍、最大規模作戦の呆れた理由

 アフガン駐留米軍は2日早朝から、タリバーンが事実上支配する同国南部のヘルマンド州で過去最大規模の作戦を開始した。NATO軍機が空から支援するなか米海兵隊4,000とアフガン国軍650の兵力を投入した。

 師団長のラリー・ニコルソン准将は「これまでの作戦とは比較にならないほど大規模」と豪語し、海兵隊将校は「ベトナム戦争後、最大級の(対ゲリラ)陸上戦」と胸を張る。眉唾ものの誇張だが、オバマ大統領就任後、最大規模の作戦であることは間違いないだろう。

 大規模作戦を展開する理由は8月20日に予定されている大統領選挙に向けた治安回復だ。春に予定されていた大統領選挙は治安の悪化を理由に延期された。41人が立候補しているが、現職のカルザイ大統領の再選が有力視されている。

写真
戦乱が絶えないアフガンの大地。男性の人生で平和な時はどれ程あったのだろうか(カブール郊外で。写真=筆者撮影)

 だがアフガニスタンは過去最悪の治安状況となっており、「カブール市長のカルザイ氏」は定着した感さえある。米国は前ブッシュ政権によってインストールされたカルザイ大統領が見かけだけでも全土を統治していることをアフガン内外に示さなければならない。

 このための大規模作戦だが、急場しのぎに過ぎない。タリバーンに巻き返されるのは時間の問題だ。

 アフガニスタンを暗黒国家にしているのは、麻薬と汚職だ。金さえ積めば凶悪犯でも脱獄できる。役人は末端に至るまでワイロを要求し公金を掠め取る。金の源泉は麻薬(ケシ)だ。この麻薬ビジネスに君臨するのがカルザイ大統領の実弟で、カンダハル州議会議長のアフマド・ワリ・カルザイ氏と言われている。

 大統領の実弟がタリバーンの聖地であるカンダハル州で州議会議長を務めるというのも摩訶不思議だ。タリバーンの資金源であるケシの密輸で、アフマド氏が兄のコネを使って便宜を図っているとの噂が絶えない。

 汚職まみれの政権を支えることは暗黒国家の闇を深くするだけだ。大規模攻勢をかければ誤爆が起き、人々の反米感情はさらに強まる。タリバーンやアルカイーダを利するだけだ。最大規模作戦が聞いて呆れる。


アフガニスタンから世界を見る

posted by 田中龍作 at 21:05| Comment(0) | TrackBack(0) | アフガニスタン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。