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2009年01月25日

労組自主管理の京品ホテルに立退き強制執行、25分で完全制圧

 米系投資ファンドに債権譲渡された東京・品川駅前の京品ホテルを自主管理していた労働組合・東京ユニオン京品支部に対して東京地裁は25日午前9時から警官隊を先頭に「立退きの強制執行」に着手した。入口でピケを張っていた支援者ら300人が激しく抵抗したが、9時20分までに警官隊によって次々とゴボウ抜き排除された。逮捕者などは出なかった。

社民党の福島瑞穂党首もピケに加わった(左端=いずれも京品ホテル前で筆者撮影)
社民党の福島瑞穂党首もピケに加わった(左端=いずれも京品ホテル前で筆者撮影)


 労働組合が裁判所の退去命令に従わないことを表明していたため、日の出直前の午前6時30分、高輪警察署から制服警官約50人が出動した。ホテル前を走る第1京浜国道は、強制執行のため片側車線が封鎖された。

 午前7時、東京地裁の小倉豊執行官らが到着し、ホテルに入ろうとしたが支援者らに押し返され、「帰れ!」「帰れ!」の大合唱の中、激しい揉み合いとなり、騒然とした状態が続いた。

警察隊は怒涛のごとく押し寄せてきた。
警察隊は怒涛のごとく押し寄せてきた。


 現場はJR品川駅高輪口の目の前。日曜日でも人の往来が多く、ものものしい雰囲気に包まれ、野次馬で黒山の人だかりとなった。白昼に衆人環視でテレビカメラも撮影する中、警官隊は凄まじい勢いで支援者のピケ隊のゴボウ抜きを続けた。

 ピケラインは20分もしないうちに警官隊によって破られた。ホテル玄関では従業員たちが最終ピケラインを張った。「職場を奪わないで」の叫びも空しく、警官隊はあっという間にホテル内に踏み込んだ。

 9時25分、館内放送が流れた。「こちらは東京地裁の執行官です。ホテルに残っている方はすぐに退去して下さい。従わない場合は公務執行妨害となります」。裁判所の『制圧宣言』だ。

 間髪を入れず執行官が1部屋ごとにチェックし、空き部屋には「執行終了」のステッカーを貼って回った。

完全制圧し立ちはだかる警察官
完全制圧し立ちはだかる警察官


 筆者は執行官に「あなたが最後ですから(速やかに)出て行って下さい」と促された。「午前11時(のチェックアウト時間)までの分は宿泊費を払っとるんじゃい!」と言い返すと、私服刑事が来た。最期の最期まで司法と警察は一体だった。

 ホテル近くの歩道では、労働組合や支援者らが集会を開き、口々に強制執行の不当さを訴えた。「これが日本の法律ですか? どこに正義はあるんですか?」。ホテル労働組合(東京ユニオン京品支部)の金本正道支部長は声を絞り出すようにして叫んだ。
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2009年01月24日

労組自主管理の京品ホテル「25日早朝強制執行」の動きにピリピリ

支援者は道行く人にビラを配る(JR品川駅前。撮影:上下とも筆者)
支援者は道行く人にビラを配る(JR品川駅前。撮影:上下とも筆者)


 強制執行は、ホテルの土地・建物の所有者である京品実業が申し立て、認められた「立ち退きを求める仮処分」によって行われる。仮処分による退去命令に労働組合が従わないことを明らかにしているため、警視庁高輪警察署などから制服警官が出動すると見られる。

 労働組合は座り込みで強制執行を阻止する構えだ。ホテルには自主管理の支援者約50名が24日夕方までに駆けつけており、深夜には150人にまで増えそうだ。

 労働組合は、「警察は強制執行しないで下さい」「従業員の生存権を奪わないで下さい」と書いた小旗やプラカード200枚を用意しており、これらを手に持ち座り込む。

 ホテル内居酒屋の料理長で労働組合の金本正道支部長は「来るべきものが来た。ここで諦めたら何のために頑張ってきたのか分からない。最後まで闘う」と口元を引き締めながら話した。

強制執行の予想前夜も平常通り働く従業員(京品ホテル)
強制執行の予想前夜も平常通り働く従業員(京品ホテル)
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2009年01月23日

労組自主管理の京品ホテル―「立退き命令」にも負けず

 黒字営業だったにもかかわらず、前経営者が他の事業で失敗したため米系投資ファンドに債権が渡った京品ホテル。労働組合が昨年10月から自主管理を続けているが、東京地裁は15日、前経営者が求めていた「立ち退き」の仮処分を認める決定を下した。今月29日の退去期限が迫るが、従業員はこれまで通り元気に仕事に励んでいる。

ランチタイムに料理店の扉を開ける富田支配人(京品ホテル)
ランチタイムに料理店の扉を開ける富田支配人(京品ホテル)


 午前11時半、ホテル内日本料理店「さが野」――。「さあ始めましょう」、富田哲弘支配人が声をかけた。板前さんたちは調理場で包丁を握り、配膳係りの女性たちはテーブルを拭く。富田支配人自らも通りに面した扉を開け、メニューを台の上に置く。退去命令が下されても何ら変わりないランチの支度風景だ。

 料理店の板長(40代)は「裁判所が決定したから『ハイ、出ていきますよ』じゃ頑張ってきた意味がない」と意気軒昂だ。洗い場の女性(75歳)は、柔和な笑みを浮かべながらも言い切る。「みんなと一緒に闘う。(ホテルには)愛着がありますからね」。

 開店すると間もなく3人のグループ客が食事に訪れた。通りがかりではない。自主管理を続ける労組へのカンパの意味を込めてわざわざ来たのだという。新聞・テレビの報道で知り、応援のために訪れる利用客が大多数を占める。

地元警察「出動なんてしたくない」

警察の本音は「世論を敵に回す強制執行などしたくない」(撮影:上下とも筆者)
警察の本音は「世論を敵に回す強制執行などしたくない」(撮影:上下とも筆者)


 労働組合が裁判所の命令に従わないことが予想されるので、警察が出動することになる。東京地裁の決定が出る以前からも地元・高輪警察署の警備課長が数回に渡ってホテルを訪れ、労働組合に事情を説明している。

 東京ユニオン京品支部の金本正道支部長によれば、警備課長は「裁判所の命令が出たら私たちも一応動かなきゃいけない。本当はそんんなこと(裁判所による強制執行のための出動)したくないんだけどね」と語ったという。100年に1度の大不況で雇用の危機が叫ばれるなか、警察といえどもホテル従業員の職場を奪うようなことはしたくないはずだ。

 もし強制執行となれば労組は座り込みで対抗する。強制執行の日時は高輪警察署担当の社会部記者の知るところとなり、マスコミ各社はホテルに張り付く。テレビ局は中継車を出す。ニュースの時間帯と重なればライブ放送だ。

 テレビカメラの前で板前さんや客室係をゴボウ抜きするようなことになれば、警察は世論を敵に回すことになる。警備課長が「強制執行なんてやりたくないよ〜」と辛そうな顔をするのはこのためだ。

 警察にとってさらに難問がある。客は裁判所が指定した「退去の対象」になっていないのだ。強制執行を聞きつければ支援者が駆けつけるのは確実だ。支援者は普通のサラリーマンだったり、地元住民だったりする。法律家も混じるだろう。食事あるいは寝泊りをしているこれらの人たちを警察はどうやって排除するのだろうか?

 従業員の勤勉で毎年1億円前後の黒字が出ていたのにもかかわらず、経営者の不始末でホテルの土地建物は米証券大手リーマンブラザーズの日本法人の手に渡ったのだ。従業員にはなんの落ち度もない。

 世論の盛り上がりが自主管理闘争を後押しすることになりそうだ。
posted by 田中龍作 at 00:00| Comment(0) | 京品ホテル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする