空き缶デモ。スカイツリーは人々を押しつぶすかのように聳える。(14日夕、墨田区押上。写真:筆者撮影)
東京タワー2本分の高さとなる東京スカイツリー。来年12月の完成を目指して工事は着々と進んでおり、浅草あたりからでも威容が目に飛び込んでくる。
お膝元の東京・墨田区では不況のなか千載一遇のチャンスとばかりに官民あげて観光開発や都市再開発にまい進している。いままで場末扱いの辛酸を舐めてきた墨田区は、スカイツリーをジャンピングボードにしようと躍起だ。
開発につきものなのが、野宿者の排除や老朽化した長屋の取り壊しだ。墨田区も例外ではないようで、「空き缶持ち去り禁止条例」を10月1日から施行した。条例は区の指定業者以外が集荷場から空き缶を持ち去った場合は20万円以下の罰金に処すというものだ。
空き缶を拾い集めてリサイクル業者に売り生活費の足しにしていた野宿者は糧を奪われることになる。兵糧攻めによる野宿者の追い出しともとれる。実際、空き缶を集めているところを墨田区役所の職員からビデオ撮影された野宿者もいる。一定の周知期間を経た後、条例違反で検挙するつもりだろうか。
14日、野宿者や支援者たちが条例に反対するデモを行った。「俺たちの仕事を奪うな」、「空き缶は俺たちのメシだ」・・・参加者たちはシュプレヒコールをあげながら浅草からスカイツリーの真下までの道のりを歩いた。ムシロ旗を掲げ、空き缶を満載した台車を押しながら。
参加者の一人で路上生活を経験したことのある男性(30代)は“空き缶集め”で食いつないだ。「当時(2008年)は中国でオリンピックがあったので1s=150円から160円で売れた。それでも一晩拾い集めて1,000円になるか、ならないかだった」と語る。
今では1s=100円まで値段が下がっている。そのうえ条例で禁止されるようなことになれば、死活問題となる。
「皆、食べるので必死だからね」。男性は言葉を吐き出した。
京都市議会でも「空き缶持ち去り禁止条例」が可決されたが、野宿者の支援充実を求める付帯決議がつけられている。
話が飛躍するようだが、北京オリンピックを思い出す。中国政府は競技場周辺や北京の表通りから路上生活者を追い出したのである。墨田区の人権感覚は中国並みなのだろうか。
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