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2009年08月01日

衆院選 貧困者の声を政治に反映させよ

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「投票権のないホームレスやネットカフェ難民にも国会議員は光をあててほしい」と訴える「反貧困ネットワーク」の宇都宮代表(総評会館で。写真=筆者撮影)


 衆院選挙まで1ヶ月に迫った31日、ワーキングプア、シングルマザー、多重債務者などで作る「反貧困ネットワーク」が総評会館に各党の国会議員を招き、生活の窮状を訴えた。

 貧困問題は密接に政治と関わる。「派遣法」「母子加算」「貸金業の規制」などが来期も国会の争点になっていることを見ても明らかだ。国会で法改正してもらうために、「反貧困ネットワーク」所属の団体は日頃からこまめに国会議員に働きかけている。

 出席した国会議員(自民・民主・共産・社民など)を前に「反貧困ネットワーク」の宇都宮健児代表が挨拶した。「ネットカフェ難民、ホームレスは住民票がないので選挙の投票ができない。きょう来ている国会議員の先生たちは、このような人たちにも光を当ててほしい」。

 小泉政権以後続いた福祉切捨てや派遣法改悪などの結果、世代を超え、あらゆる階層に貧困が広がった。

 奨学生は「アルバイトで生活していた学友が進級できなかったため寮を追い出され学校からもいなくなった」。野宿者支援団体の代表は「ホームレスが倍増している」。シングルマザーは「一日も早く母子加算を復活してほしい」。派遣労働者は「労働者派遣法は労働者を切り捨てる法律だが、労働者を守る法律に変えてほしい」・・・・・・皆、血を吐くようにして訴えた。

 「反貧困ネットワーク」は、貧困の実態調査と生活保護、雇用、母子家庭など16の分野でセーフティーネットを早急に構築することを、各党に要求してゆく。

 「貧困問題に取り組まない政治家はいらない」というのが「反貧困ネットワーク」の揺るがぬスタンスだ。

 次期政権党となることが有力視されている民主党の菅直人代表代行は「貧困の実態調査はマニフェストには盛り込まなかったが、(鳩山首相の)所信表明に入れたい」と答えた。

 失業率が最悪を更新し続け、年収200万円以下のワーキングプアが1千万人を超えるご時世。どの政党が政権を取っても貧困問題は避けて通れないことは事実だ。
posted by 田中龍作 at 00:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 貧困 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月09日

保険証なしでもOK、貧者のワンコイン健診

 「オレ保険証持ってないからなあ」とあきらめているワーキングプアや、「病院はお金がかかり過ぎて…」と二の足を踏んでいる主婦に心強い味方が現れた。500円で予約も時間も要らずに健康診断ができる店が東京・中野に登場した。看護師の川添高志さん(26歳が開業した「ケアプロ中野店」だ。

 若者や買い物の主婦などで賑わう「中野ブロードウェイ」の一角に社長の川添さんと店長で看護師・保健師の浅井裕美さんが常駐する。奥行き1メートル足らず、間口5メートルほどの細長い店だ。

 健診項目は「血糖値」「総コレステロール」「中性脂肪」「身長・体重・BMI・血圧・骨密度」の4つで、それぞれ500円。4項目セットだと1500円となる。1項目1分余り、4項目すべて受けても7分だ。予約も要らない。もちろん保険証も不要だ。

 利用者の2割がフリーター、3割が主婦である。病院で健康診断を受けると6千円〜1万円はかかる。その日暮らしのフリーターや一家の財布を預かる主婦が、おいそれと受診できる金額ではない。

 川添氏が中野にワンコイン健診の店をオープンしたのは、若者や主婦が多い街だからだ(若者が多ければ自ずとフリーターも多くなる)。川添氏は健康診断を受けることが困難な「健診弱者」にこだわる。

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「血糖値が高いですよ」と浅井看護師。左が川添社長(「ケアプロ中野店」で。写真=筆者撮影)


  医療の道に進むきっかけになったのは高校生時代に参加した老人ホームでのボランティアだった。介護ヘルパー2人でお年寄り20人の世話をしていた。入浴後濡れたまま服を着せられるお年寄りを見て、ヘルパーがいくら頑張っても限界があると痛感した。「枠組みから変える仕事がしたい」と強く思うようになった。

 大学は医療看護学部に進んだ。学生時代に米国のスーパーで「ミニッツ・クリニック(1分診療所※)」を見て、日本もやがてこうなるだろうと閃いた。

 川添氏の予想は的中した。厚労省によると健康保険証を取り上げられた世帯は33万世帯に上る。1世帯平均3〜4人として100万人が事実上病院にかかれないのだ。制度上「保険証がなくても病院は診療しなければならない」ことにはなっているが、貧困世帯が10割負担などできようはずがない。国民皆保険制度は破綻しているのだ。

 生活習慣病は死因の7割、医療財政の3割を占める。生活習慣病の多くは健康診断でチェックできる。皮肉なことに貧困層ほどコレステロールの高いファーストフードやラーメンなどで腹を満たす。生活習慣病を患いやすい食生活だ。だが健康保険証を持っていなかったり、費用面で無理だったりするため健康診断が受けられない。

 来店した派遣労働者が川添社長にこぼした。「同じ仕事をしているのに社員は会社の健康診断が受けられて、俺たちは受けられない」。

 憂き目に遭っていた「健診弱者」も、中野までの電車賃と500円玉があれば健康診断を受けることができる。「ネットカフエで健康診断をやってみたい」。川添氏は意欲をのぞかせる。

 医師不足や財源不足で病院の廃業が相次ぐ地方の都市や農漁村でも展開できそうだ。

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(※筆者注)
 国民皆保険ではない米国ではスーパーに健康診断施設がある。利用者の多くは貧困層だ。


命の値段が高すぎる!医療の貧困
posted by 田中龍作 at 21:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 貧困 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする