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2011年03月10日

枚方前市長「自白調書へのサインは人生最大の悔い」

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 中司宏・前枚方市長。「自白調書にサインしたのは人生最大の悔い」と力なく語る。(8日、自由報道協会オフィス。写真:筆者撮影)。


 「ストーリーに沿った逮捕・取り調べ」「メディア・スクラム」「自白偏重の裁判」・・・歪んだ刑事司法と記者クラブによって作り出された色彩が濃い枚方官製談合事件。最大の“被害者”でもある中司宏・前枚方市長が8日、記者会見(主催:自由報道協会)で常軌を逸した検察の取り調べや記者クラブの世論操作の実態を明らかにした。

 枚方官製談合事件は枚方市が2005年に発注した清掃工場の建設をめぐって不正競争入札(談合)があったとして大阪地検特捜部が、大手ゼネコンの大林組顧問、大阪府議、府警警部、同市の中司宏市長、小堀隆恒副市長を競争入札妨害罪などで逮捕した。

 中司市長は電子入札など談合防止のための制度作りに積極的に取り組んでいた。身に覚えのない逮捕劇だった。

 大林組顧問は執行猶予付有罪、府議と府警警部補は実刑が確定した。小堀前副市長は無罪判決(確定)を受けたにもかかわらず、中司前市長は1、2審とも有罪となり現在上告中である。

 有罪と無罪の分かれ目となったのは自白調書へのサインだ。中司前市長はサインし、小堀前副市長は最後まで拒んだ。

 「サインしたことは私の人生の中で最大の悔い。悔やんでも悔やみきれない」。中司氏はこう語り唇を震わせた。

 中司氏によれば検察の取り調べは苛烈を極めた――
「人間性をズタズタにするような言葉を浴びせ、机を叩き蹴飛ばす。あげくに『小堀(副市長)はもう認めたんだぞ。お前だけが突っ張ってると小堀にもお前の親族のためにもならんぞ』『何年もここ(拘置所)から出られんぞ』と脅してきた」。

 「小堀さんや親族に迷惑をかけてはいけないと思い、仕方なくサインした。裁判所も事情を察してくれると思ったのが間違いだった」。
中司氏は力なく語った。

 ところが小堀副市長は最後まで否認して自白調書にはサインをしなかったのだ。それでも新聞・テレビには「小堀副市長、容疑認める供述」の見出しが躍った。
 
 小堀副市長(当時)に対する取り調べはさらに惨いものだった。

 腎臓ガンを患った小堀副市長は片方の腎臓を切除している。逮捕当時は前立腺肥大症で投薬中だった。取り調べによる過度のストレスで小便が出なくなった。高齢の医務官が尿道にカテーテルを挿入したのだが乱暴だったため尿道出血が止まらなくなった。尿漏れも続いた。このため小堀氏は介護用のオムツをつけさせられ取り調べを受けたのである。

 中司氏の話は記者クラブメディアにも及んだ。逮捕される2か月位前から連日、誹謗中傷記事が紙面やテレビ画面を賑わした。ある全国紙に対しては事実無根のため名誉棄損で訴訟中だ。

 枚方支局の記者が「市長はそんな悪いことはしていない」と書いたところ、検察庁担当の記者から叱られて飛ばされた(左遷させられた)。「枚方市長はトンデモなくヒドイ男である」との世論操作をしておけば、検察は無理な捜査を重ねることも可能だ。

 検察と記者クラブメディアが冤罪を作り出す“共犯者”なのである。

 記者会見には足利事件の無罪を勝ち取った佐藤博史弁護士が同席した。中司氏の弁護団に入ることになったのである。佐藤弁護士は「冤罪は特殊な人だけじゃない。皆、明日は我が身の問題」と強調した。

 
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2010年11月11日

「検察のあり方検討会議」始まったが 〜後編〜

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検察のあり方検討会議。「マスコミへの検察リークはあるのか、国民は知りたがっている」と話す嶌信彦委員。(10日、法務省。写真:筆者撮影)


 火を噴くような検察批判のなか、元検事総長の但木敬一委員の発言がふるっていた―

 「今回の事件で164日という長きにわたって村木局長の自由を奪ってしまった。検察官がよって立つ客観的な証拠を改ざんするということはあってはならない。痛恨の極みです。それをやった(前田恒彦)検事が検察に身を投じる時(任官時)は、有為な青年であり健全な正義感を持っていた・・・(後略)」。

 但木委員は問題を大阪地検特捜部の前田検事による事件に限定しようとしているのである。江川紹子委員が「大阪地検特捜部のとんでもない検事がいたという問題ではない」、宮崎委員が「トカゲのシッポ切りに興味はない」と指摘しているのにもかかわらず、だ。

 但木委員は特段、江川委員らに反発しているわけではない。検察庁の考えを示すものとしてごく自然に発言したまでだ。大阪特捜部の問題に限局して処理してしまおうというのが真意なのである。

 各委員の挨拶が終わった時点で報道陣は退出となった。会合終了後の座長記者会見では、記者団から「フルオープンにしないのか?」との質問が相次いだ。

 千葉座長は「原則公開にする」方針を示した。「何が『原則』にあたるのか?」と記者団。同座長は公開できない案件として「プライバシーに関わる事柄」「公判前の事件」などを挙げた。

 検察はこれらを楯に「密室での取り調べ」を当たり前のように特権化し、無理な自供を強いてきたのだ。それが数々の冤罪を生み出してきたのである。「検察は『プライバシー』と『公判前』を隠れ蓑にしてきたのではないだろうか?」「名前とか地名を隠せばプライバシーは守れるのではないか?」筆者はこう千葉座長に質問した。

 答えは「捜査が進んでいるものについての公開は難しい」ということだった。

 座長は公開できないものにもう一つ「人事」を挙げた。無罪を出すと昇進に響く。一生田舎暮らしとなったりもする。このため検事たちは被告に無理な供述を迫るようなことになる。甚だしきは物的証拠さえも改ざんするのである。拙ジャーナル「特捜検事逮捕『地方はイヤだ』が招く改ざん」(9月22日付)に詳しく記しているのでご覧頂きたい。

 千葉座長に問うと次のような答えだった。「人事のシステムはどうなっているのか、正確なことを検討会議の中で議論しなければならない。だが公開すると検察側から資料が出てこなくなったりする」。

 こうして肝心要、核心の部分は非公開となるのである。検討会議は法務大臣の諮問機関だ。強制力はない。検察の問題点を改善する処方箋が出たら、世論に訴えて効力あるものにする必要がある。検察に遠慮していたら、冤罪はなくならない。

※参考記事
「特捜検事逮捕『地方はイヤだ』が招く改ざん」

http://tanakaryusaku.seesaa.net/category/6906192-2.html
 

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2010年11月10日

「検察のあり方検討会議」始まったが 〜前編〜

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「検察のあり方検討会議」第1回目会合。左から2番目が江川氏、右隣が郷原氏。(10日、法務省。写真:筆者撮影)


 郵便不正事件を捜査していた大阪地検特捜部主任検事による証拠改ざんで信用が地に堕ちた検察。数々の冤罪を生む組織のありようが今、問われている。検察を立て直すために外部有識者の意見を聞く、柳田稔法務相の諮問機関「検察のあり方検討会議」(座長:千葉景子前法相)の第一回目会合が10日、法務省で開かれた。

 検討会議の委員は弁護士、ジャーナリスト、検事出身者など14人からなる。会議の冒頭、各委員は自己紹介を兼ねて検討会議に臨む抱負を語った。的を射ているだけに、検察首脳が聞けば目を剥いて怒りそうな内容だった(敬称略)――

 石田省三郎(弁護士):「10年前にある省庁の事務次官の弁護を担当した。長期拘束を受けた後、その次官が言うには『官庁のことは大体知っているつもりだったが検察庁ほどひどい官庁があるとは今まで全く知らなかった』」。

 江川紹子(ジャーナリスト):「私は検察のあり方全体を見直す会議と聞いたので委員をお引き受けした。大阪地検特捜部だとかとんでもない検事がいたという問題ではない。(江川氏は冤罪事件の具体例を挙げながら)再審となって有罪立証ができないにもかかわらず有罪を主張している。これが果たして公益の代表者の対応でしょうか。これ以上冤罪を出してはならない」。

 郷原信郎(検事出身の弁護士):「私は23年間、検事を務めていたので検察のいい面、悪い面の両方を知っている。現在の検察は閉鎖的な組織で自己完結するところから、すべての判断を自分でするため悪い面が出ている」。

 嶌信彦(ジャーナリスト):「検察のリークがあるのかないのか。現実の問題として何か事件が起きるとマスコミは一斉に同じ方向を向いて書く。報道は一般社会に大きな影響を与える。多くの国民はこの点(検察)リークについて聞きたがっている」。

 宮崎誠(元日弁連会長):「日弁連が幾度もお願いしてきた冤罪防止の取り組みがなされていない。無理にでも有罪を取りに行こうとしている。大阪地検特捜部の存廃などトカゲのシッポ切りには全く興味がない」。  

 在野の委員からは、火を噴くような激しい批判が相次いだ。冤罪に苦しめられた人々の怒りを代弁しているようでもあった。

 ところが元検事総長の但木敬一委員は屹然と孤高を保っていた。この人、脳みその芯から「検察は正しい」と思っているようだ・・・

          (つづく)


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