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2010年10月21日

鈴木宗男前議員、ガン転移で収監遅れる

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鈴木宗男前議員は食道ガンと診断されたことを明らかにした。中央は歌手の松山千春氏、右端は元外交官の佐藤優氏。(20日、衆院第2議員会館。写真:筆者撮影)


 北海道の港湾開発や林野行政に絡んだ贈収賄事件で実刑が確定していた鈴木宗男前議員は20日、食道ガンが見つかったことを明らかにした。来週、入院し手術する予定。早ければ今月中にも収監されるものと見られていたが、遅れることになる。

 収監されれば、未決拘留の437日を差し引いて1年5ヶ月間の刑務所暮らしとなる。

 鈴木前議員は衆院会館で催した歌手の松山千春氏、作家の佐藤優氏とのトークイベントで自らの病状を話した。収監の時期は手術後、検査を受けてからとなる。弁護士を通じて検察庁の了解を得た、という。

 鈴木氏は7年前に胃ガンを患っている。ガンが見つかったのは2003年10月。437日にものぼる拘留から保釈されたわずか1ヶ月余り後のことだ。捜査での取調べや拘留中のストレスが胃ガンの発生原因になったのだろうか。

 そして今度は収監目前に食道ガンと診断されたのである。ガンが転移すると患者の生存率は著しく低下する。鈴木氏は検察への怒りをぶちまけるように独特の早口でまくし立てた(以下鈴木氏の話)――

 小沢(一郎)さんの西松事件をやった谷川という検事が言っていた。「鈴木は三井物産から3億円もらっている。これでやる(立件する)んだ」と。私は一円の関係もないのに検察はストーリーを作っていた。

 ここにいる国会議員の先生がたも狙われたらオシマイですよ。小沢さんも狙われた。検察は「胆沢ダムで小沢さんが口利きしている。何億円も貰っている」と言って調べたが(証拠となるものは)出なかった。

 しかし一般の人は(マスコミを通じて)頭にこびりついているから「小沢けしからん」となる。

 きょう水谷功(水谷建設元会長)さんが私の所に来て(次のように)話した。前田(恒彦)検事は「俺たちは政治家と官僚を捕まえるのが役目だ。小沢にカネやっただろ」。

 否認すると保釈がなくなるので検察に引き摺られる。これが検察の取調べの実態です。密室の中で追い込まれてゆく。

 裁判官は調書優先主義です。(検察)調書の信用性は高い。届けた人が「正規の政治献金です」と言っても、公判での証言の信用性は低い。こんなバカな判断はない。

       ―――――(鈴木前議員の話ここまで)――

 郵便不正事件で無罪が確定した厚労省の村木さんは、取調べの段階から全面否認を続けた。スネに傷を持っていなかったからだろう。だが検察に脅されるような傷があったりすると引き換えに調書にサインさせられる。

 地方検察庁の廊下を歩いていると検事部屋から声が聞こえてくることが時々ある。「いいかオマエ、公判になったら否認するんじゃないぞ」。数えきれないほど余罪を持つチンピラやくざに検事が念を押していたのを思い出す。このようなケースでは裁判官は検察調書に書かれている供述内容をそのまま認めるだろう。

 今回の郵便不正事件で、検察は狙った大物を起訴するためにストーリーを作り、供述をでっちあげていたことが明るみに出た。他の事件でも同様に供述がねつ造されていた可能性が高い。検察庁内の出世争いに勝つためだというから質が悪い。

 政治家や官僚の肩を持つつもりはないが、過去の贈収賄事件は全て洗い直す必要があるのかもしれない。


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posted by 田中龍作 at 00:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 事件 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月29日

冤罪に手を貸さないためにも記者会見の可視化を

 学校を卒業し新聞社、テレビ局、通信社に入ると最初に担当させられるのは警察取材だ。業界用語で「サツ回り」と呼ぶ。事件が起きると広報課(報道課)が容疑者の住所、職業、年齢はもとより逮捕容疑までを列記した発表用紙を出す。

 発表用紙は横書きだが、そのまま縦に書き写せば曲がりなりにも原稿になる。普通、自分で取材し直して肉付けするが、ベースはこの発表用紙だ。実に便利な代物である。

 書かれている内容はすべて警察側から出たものだ。容疑事実も供述も、すべて警察にとって都合のいいストーリーで描かれている。「被疑者は容疑を認める供述を始めている」などというフレーズもちょくちょく登場する。

 “すべて警察側の発表でいいのだろうか?容疑者の言い分は取材しなくていいのだろうか?”最初は誰でも疑問を持つはずだ。筆者は違和感を覚えて仕方がなかった。後ろめたい思いすらした。

 ところが半年も過ぎればこの感覚はなくなる。警察幹部からどれだけ捜査情報を聞き出してくるかが社内での評価対象となる。捜査情報というのはリークである。

 メディアの記者たちは一年生の時から当局の発表やリーク漬けが当たり前の環境のなかで育っていくのだ。

 大阪、東京地検特捜部が手がける事件は記事の扱いも大きくなる。記者にとってリークは有難い情報源となる。検察はリークを餌に記者を手なづけることとなる。

 大阪地検特捜部の主任検事が証拠隠滅で逮捕された事件が改めて示しているように、検察は自らが仕立てたストーリーに沿った供述調書を公判に提出する。そして有罪を取りに行く。

 「被告は『●●先生のためにやった』と涙ながらに供述し始めた」などとするリークがそのまま記事となり、読者・視聴者の頭に摺り込まれていく。被告の社会的生命は半ば奪われるようなものである。ここが検察の狙い目だ。

 検事は「これ以上マスコミに書かれたくなかったら容疑を認めたらどうだい?外に出られるし執行猶予だってつくんだから」などと脅してスカしあげる。これで多くの被告は供述調書にサインするのである。『記者クラブメディアは冤罪に手を貸している』とするのはこのことだ。

 メディアが冤罪に手を貸すことを防ぐためには検察記者会見のオープン化しかない。フリーやネット記者を入れビデオ撮影を認めれば、どこまでが発表でどこからがリークなのかが分別できるはずだ。

 フリーやネット記者がリークを受けて書いたりすれば、たちまち読者を失う。だからリークでは書かない。先ず記者会見の可視化をしようではないか。取調べの可視化は法改正などのため多少の時間を要するが、記者会見の可視化(=オープン化)は明日からでもできる。
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2010年09月22日

特捜検事逮捕 “地方はイヤだ”が招く「改ざん」


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検察庁。巨悪に立ち向かうはずが、「データ改ざん」までして無実の人を貶めていた(写真:筆者撮影)


 前代未聞の事件が起きた。自らの描いた事件の構図に沿うように検察官が証拠を改ざんしたというのだ。事件の第一報に接した時、かつて懇意だったA検事とB検事の口ぐせを思い出した――。

 筆者は若かりし頃、西日本のある県で検察担当記者をしていたのだが、夜回り先のひとつにA 、B検事の自宅である国家公務員宿舎があった。両氏とも口癖は「筋の悪い事件ばかりやらされる(担当させられる)地方はもう御免だ」。

 事件の筋が悪いのには「れっきとした」理由があった。警察庁から出向してくるキャリアの県警捜査2課長がとんでもない事件を持ち込でくるのである。捜査2課とは主に汚職などの知能犯を扱う。2課長は警察庁から来るキャリアか準キャリアのポストだ。

 東大法学部出身のキャリアは、たいがい2年で地方の県警から本庁に帰る。出世のため地方で成績を挙げたい彼らは、難しい事件を一件でも多く挙げたい。A、B検事と同時期に県警に赴任していたのが、某捜査2課長だった。

 両検事は酒が入ると「あの野郎、これでどうして有罪が取れるんだという事件ばっかし持ち込んでくるんだよ。無罪スレスレだ」と捜査2課長を呪っていた。余計な仕事が増え、有罪が取れなければ自分の大失点となるからだ。

 上述したように地方の検察庁に赴任すれば、某捜査2課長が持ち込んでくるような事件ばかりを担当しなければならない。B検事は「今度の転勤先がまた地方だったら俺は検察庁を辞めてやる」と宣言していた。そして宣言通り辞職した。転勤先がまた同じような地方だったからだ。現在は東京で弁護士をしている。企業犯罪が専門だ。

 もう一人のA検事は、数年前まで大阪地検特捜部で責任ある地位にいた。先日都内で開かれた「えん罪」の勉強会に三井環・元検事が出席していた。三井元検事は大阪高検の公安部長時代(01年)、検察の裏金を内部告発した。このため検察が組織をあげてあの手この手で容疑を見つけ出してきて逮捕したのである。

 筆者が「A検事は元気ですか?」と尋ねると「あいつはストーリーの名手だよ」、三井氏はニヒルな笑みを浮かべながら答えた。

 “Aさんも変わったんだなあ”。筆者は名状し難い感慨にとらわれた。A検事と司法修習生時代に同期だったある弁護士が「Aは正義感に燃えたいい奴っちゃ」と語っていたのを思い出す。若きA検事は公判廷で対峙する弁護士を唸らせていた。それが、「ストーリーの名手」となり下がっていたのだ。サラリーマン的観点から見れば「名手」と言われるまでに昇進したことになるが。

 逮捕された前田検事は押収したフロッピーを改ざんしてまで有罪を勝ち取りたかった。その背景にはずっと陽の当たる場所にいたい、地方には行きたくないという心理が奥底にあったはずだ。サラリーマン諸氏も地方の支社に飛ばされたくないために、データを改ざんしてウソの営業報告をしたりするではないか。


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