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2010年07月04日

選挙サンデー、新宿駅はさみ基地問題でコントラスト

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自民党街宣。谷垣総裁も候補者らも沖縄基地問題には触れなかった【4日、JR新宿駅西口で。写真:筆者撮影】


 民主党政権10ヶ月の実績に審判を下す参院選の投票日まであと一週間。鳩山前首相を退陣に追い込んだ沖縄基地問題について、社民党と共産党以外の政党は全くと言ってよいほど触れない。

 基地問題は民主党にとってはまだ「生傷」の状態であるし、半世紀にわたって政権を担ってきた自民党は米軍と共に問題を作った張本人だ。両党が頬被りしたがるのも分からないではない。

 選挙サンデーの4日、日本最多の乗降客を抱えるJR新宿駅の西口で自民党の谷垣禎一総裁と候補者らが有権者に支持を訴えた。候補者らは景気回復を中心に経済政策を語り、、沖縄の「オ」、基地の「キ」も口にしなかった。

 谷垣総裁は民主党への批判として「鳩山政権が崩壊したのは『政治とカネ』でも『普天間』でもない。マニフェスト破りなんですよ」と述べるに留まった。『普天間』問題の内容には一切踏み込まないのだ。

 線路を挟んだ東口を覗くと様相が一変した。黄色のTシャツに身を包んだ平和活動家らがプラカードを手に集まった。『沖縄に基地を押し付けるな・新宿ど真ん中デモ』の参加者たちだ。

 黄色は「米軍基地にノー」を示す色で、普天間基地の県内移設に反対する沖縄県民大会(4月25日)では黄色が会場を埋め尽くした。新聞・テレビは鳩山首相が退陣するまで沖縄基地問題を連日大きく伝えた。

 あれからわずか1ヶ月余り。沖縄基地問題はすっかり鳴りを潜めた。正確に言えば、メディアが報道しなくなった。
 
 『新宿ど真ん中デモ』実行委の一人、園良太さん(29歳)は憤る――「鳩山前首相が退陣してからこの一ヶ月間、(沖縄基地問題の)忘却はひど過ぎる。投票前に集会とデモを行うのは、街の人々にも政権にも忘れてもらいたくないから」。

 30年ほど前「原発を新宿に」という運動があった。米国のスリーマイル島で起きた原発の放射能漏れ事故を自分たちの問題として捉えようという発想だった。

 参院選は、菅総理が自民党に便乗する形で持ち出してきた「消費税増税」構想をめぐって騒々しい。沖縄基地問題は見事にかき消された。前出の園さんが言うように、選挙中だからこそ声を大にして問いたい。
posted by 田中龍作 at 19:05| Comment(1) | TrackBack(0) | 沖縄 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月17日

宜野湾市長「ノーと言い続けることが最大の抵抗」


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伊波洋一・宜野湾市長。米軍再編の流れの中で普天間移転を考える必要性を説いた。【16日、海外特派員協会=東京・有楽町=。写真:筆者撮影】


 世界一危険な飛行場と言われる米軍普天間基地を抱える沖縄県宜野湾市の伊波洋一市長が16日、海外特派員協会で記者会見を開いた。市長はグアム移転の妥当性を強調した。

 伊波市長が先ず挙げたのは普天間基地の実情と日本政府の認識のギャップである。「『普天間は即時閉鎖すべきである』というのが米国の基準を知る者にとっては常識」。
 ところが「岡田外務大臣は『辺野古(滑走路)が出来なければ普天間は動かない』と言って憚らない。危険性を14年間放置しているが、『そのままにしていていいんだ』ということが当り前に語られる、この落差」。
 市長は「ここ(落差)をしっかり見つめていかなければならない」と力を込めた。

 伊波市長の持論は「米軍再編の流れの中で普天間基地の移設を考える」だ。
「『(グアムの)アンダーセン空軍基地に海兵隊のヘリ部隊が来る』と4月に地元市長が記者会見で明らかにしている。米軍はテロとの戦争のために同盟国との関わりを重視している。日米安保条約は第3国の軍隊を日本の基地に入れることを禁止しており、沖縄では多国籍軍の訓練はできない。米軍は多国籍軍のためにテニアン、グアム、マリアナを中心に基地を作ろうとしている」。
 
 伊波市長は上記の事実を踏まえて「普天間問題」の解決策を鳩山政権に提言したが……。「グアム移転の詳細を明らかにし普天間、辺野古の問題を解決するための資料を(官邸に)提供したが活かされなかった」。
 伊波市長によれば、鳩山首相周辺にブロックされて秘書官にも渡らなかったという。

 鳩山前首相の「最低でも県外」発言は、寝た子を起こしてしまったと言える。伊波市長は次のように話した。
 「基地は容認しないが発展するために受け入れて行こうという自公系の首長が基地反対に変わった。容認派の首長も『基地を支えよう』という心が折れた。今さら受け入れてくれと言っても無理。大きな変化を防衛大臣も外務大臣も官房長官も読めなかった。菅総理はそこをしっかり受け止めて対処しなければ決して前に進むことはできない」。

 外国人記者から「北朝鮮と中国は脅威か?」と質問されると、伊波市長は「脅威ではない。脅威なのは米軍。中国とは何千年もの経済・文化の交流がある」。

 記者会見が終わった後、筆者は伊波市長に「誰が知事になっても辺野古の『埋め立て許可』のサインはできないでしょう?」と尋ねた。海面埋め立ての許認可権限は県知事が持つ。市長は「県民がノーと言い続けることが最大の抵抗」。基地の島に生まれ育ってきた闘士ならではの答えが返ってきた。
posted by 田中龍作 at 01:20| Comment(2) | TrackBack(0) | 沖縄 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月30日

社民党、無念の連立離脱 雇用や福祉で閣外協力

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罷免された経緯を全国幹事長会議で改めて報告する社民党の福島党首(東京・麹町で。撮影:筆者)


 社民党は沖縄を裏切ることはできなかった。「選挙か基地か」の葛藤の末、苦渋の決断が下された――米軍普天間基地移設の日米合意をめぐって福島みずほ党首が消費者担当大臣を罷免された社民党は30日、都内で全国幹事長会議を開き連立政権からの離脱を正式に決めた。今後は雇用や福祉などの政策実現のために閣外協力の形をとる。辻元清美・国土交通副大臣は辞表を提出する。

 「この内閣にいたから雇用や子育て支援などの政策を実現できたと認識している。政権を離脱することは極めて残念、本当に残念」。全国幹事長会議を終え記者会見を開いた福島党首は、無念さをにじませた。国会議員が衆参合わせて12人という小政党が政権を離脱すれば存在感さえ失ってしまうおそれがあるからだ。

 重野安正幹事長は「離脱を致しますが、民主党、国民新党との政党間の付き合いは残す。雇用や格差問題に取り組むために引き続き頑張っていく」と話し、民主党政権に閣外協力することを強調した。

 閣内にいることで政策を実現し有権者に自らをアピールできる国会議員は離脱に慎重だった。安保問題に熱心な地元有権者からの突き上げに遭う都道府県の幹事長は離脱に前のめりだ。両者のスタンスの違いで会場は緊張感を孕んだ。

 高知県連からの出席者は「政権にしがみつくと社民党の顔が潰れる」と話す。支持者からは「(閣内にいるのを)早く止めなさい」といった内容の電話が相次ぐ。中には「昨年の総選挙では民主党に協力したが今度の参院選は(票を)入れない」と憤る支持者もいる、という。

 筆者は会場で全国県連からの出席者に片っ端から聞いたが「もう政権離脱で態度は決まっている」「協議するまでもない」という返事ばかりだった。

 ただ民主党と選挙協力の関係にある新潟県は、見解が180度異なる。同県連の田上敏幹事長は「何が何でも政権に留まってもらいたい」と苦しい胸のうちを明かした。

 新潟県選出の近藤正道参院議員は、腕組みをし天井をずっと見つめたままだった。表情は疲れきっていた。

 沖縄県連からは書記長、委員長、副委員長が訪れた。3人は政府が日米合意した翌朝の『琉球新報』と『沖縄タイムス』を出席者全員に配布した。「屈辱の日」(稲嶺・名護市長)であったことを理解してもらうためだ。

 沖縄県連の仲村未央書記長は「福島党首が署名拒否を貫いたことは『我が意を得たり』だ。鳩山政権には怒りと失望を覚える。沖縄を切り捨てたに等しい」とストレートに吐き出した。

 沖縄と比例区は明確に「鳩山政権にノー」と言えるが、民主党との選挙協力を抱える他の県連はそうではない。小政党の苦しさだ。

 社民党の重野幹事長は会議後の記者会見で次のように話した。福島党首の罷免直後、民主党の小沢幹事長に電話を入れ「選挙協力を引き続き御願いします」と依頼した。小沢氏からは「心配しなくていい」との返事があった――こう明かす重野幹事長の顔には安堵の笑みが浮かんでいた。
posted by 田中龍作 at 20:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 沖縄 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする