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2010年12月22日

魔境「検察審査会」の暗部が半分見えた

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【ビフォー】最高裁が提出した「審査事件票」。名前と事件名以外すべて真っ黒けだ。(写真:筆者撮影)


 検察審査会の闇を追及している民主党の森ゆう子議員(参院法務委員会)が、最高裁に命じて「審査事件票」を提出させた。「審査事件票」とは検察審査会の会議を開いた回数や立ち会った検察官の人数など基本的なデータをまとめたものだ。

 最初に最高裁から提出された「同事件票」は1度目の議決に関するもので、「被疑者:小沢一郎」と「被疑事件:政治資金規正法違反」の2件以外はすべて真っ黒に塗りつぶされていた(写真・上段)。申し立てを受理した日までが塗りつぶされていることに驚く。

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【アフター】森議員が厳しく指摘して再提出を求めたところほとんどの黒塗りが外された。(写真:筆者撮影)


 「個人情報でも(捜査の秘密でも)何でもないではないか?」あまりにも不誠実な最高裁の対応に憤慨した森議員が再提出を厳しく求めたところ、約2週間後に「黒塗り」がほとんど外された「事件票」が出てきた(写真・下段)。

 8回にわたって会議を開き、検察官延べ1名が立ち会ったことなどが分かる。

 だが、強制起訴を決めた2度目の議決に関する『審査事件票』はまだ提出されていない。肝心要の方はまだ闇の中なのだ。

 森議員は「『1度目の議決に関する審査事件票』を出した以上、『2度目の事件票』を拒否する理由はなくなった」と話す。2度目の事件票の提出は近いとの見通しを示した。それを足掛かりに問題の核心に迫る方針だ.

 森議員の調査により明るみに引きずり出されたのは「事件票」だけではない。検察審査会委員を選ぶソフトは恣意的にプログラムを操作できることが同議員らによる実験で明らかになった。平均年齢が34・55歳(最初は30・9歳)という若い審査会委員を選び出すのはいとも簡単だ。

 新聞・テレビで朝から晩まで「小沢はクロだ」と喧伝すれば、社会経験が浅い委員たちの柔らかい脳には「ほとんどクロ」と擦り込まれる。当然議決もクロつまり起訴相当となる。

 「嫌いな人間を検察審査会に申し立て、TBSの『朝ズバ』で煽れば刑事被告人にされる。私は小沢さんのことだけを言ってるのではない。検察審査会というものがある限り誰でも刑事被告人にされる恐れがある。法改正で検審を廃止する必要がある」。森議員は検察審査会とマスコミに対する不信感を露にした。

 森議員ならずとも両者への疑念や反発は国民の間に渦巻いている。ここを読めない政治家と記者クラブメディアは早晩、国民から見放されるだろう。


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2010年12月11日

続・「可視化潰し」 〜冤罪防止より小沢外し〜

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政府が先回りして『一部可視化』法案を提出する方針が明らかになった。それを受けて開かれた「可視化議連」の会合は緊張感が漂った。(9日、衆院第2議員会館。写真:筆者撮影)


 「可視化議連」が議員立法で提出することにしていた「特捜調べの可視化」は今国会に間に合わなかった。そこを見透かしたかのように法務検察は「特捜調べの『一部』可視化」を打ち上げた。      

 来年の通常国会で政府提出法案となるので「可視化」をめぐって民主党は分裂することになる。

 「可視化議連」の川内博史会長が政府を牽制した―「拡大政調で『何で可視化なんかするんだ』『可視化なんてする必要がない』なんて言う先生がいる。民主党がマニフェストで国民の皆さんに訴えたことは何だったんだということを明らかにして行きたい。そうして法務省の悪企みを許さない」。

 田代郁議員が呼応した。「取調べの可視化をする前に民主党の議論の可視化を・・・」。会場からは笑いがこぼれ、緊張した雰囲気が一瞬ほぐれた。

 川内会長は一方で苦しい事情も明かした―「一部をカッコに入れて『特捜案件を可視化した』と政府・役所は言う。内閣が法案を提出した後で我々がいくら『それは違う』と言ったところで対決できない。先手を打って我々が提出する」。

 法務検察は全面可視化を渋る理由を「録画したら全部のテープを見なければならなくなり、裁判が遅延する」としている。

 田代議員は「任意性を争う時は可視化した方が(時間が)短くなると直感的に思う」と語り、裁判遅延にはならないとする。

 「日弁連・取調べの可視化実現本部」の田中敏夫・本部長代行は「弁護人は『録画を全部流せ』なんてバカなことは言わない。法務省による“タメにする議論”だ」。

 そのうえで田中氏は一部可視化の危険性を次のように解説する。「一部可視化されたりしたら、自白させられた最後の部分だけが録画される。(逮捕当初)否認していた人がなぜ自白になるのか。その過程が詳らかにならない」。

 「取り調べの全面可視化」は、政権交代を成し遂げた09年総選挙のマニフェストで謳いあげたほどの重要課題だ。「後を絶たない冤罪を無くしてほしい」と願う国民からの支持を得たものである。

 マニフェスト破りをさらに重ねてまで、政府が全面可視化を潰しにかかる理由は党内事情にあった。

 「可視化議連」会長の川内博史議員、事務局長の辻恵議員、切り込み隊長の森ゆうこ議員はいずれも名だたる「親・小沢」だ。議連は、小沢一郎元代表の秘書だった石川知裕議員の逮捕をきっかけに発足した。石川議員の供述が検察に都合の良い内容だったからだ。

 冤罪をなくすことより「小沢外し」に血道をあげる菅政権と法務検察の姿がそこにある。

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2010年12月09日

「可視化潰し」 〜法務省役人が“盗聴”〜

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“法務省の役人が盗み聴きをしていた” カメラを向けると顔を隠すようにして去って行った。(9日、衆院第2議員会館第7会議室前。写真:筆者撮影)


 「無理やりな捜査のあげく厚労省元局長の無罪が確定した郵便不正事件の検証を進めている最高検は、特捜の取調べの一部可視化を導入する方針」―このニュースの第一報に接した時、筆者は「法務検察に先回りされた、しまった!」と焦った。

 裁判官が調書を優先的に採用する現状を考えた場合、冤罪を防止するには取り調べを全面可視化することが最も望ましい。日弁連、人権団体、当事者である冤罪被害者などが取り調べの全面可視化を求めているのはこのためだ。

 ところが最高検は『一部』可視化で済まそうというのである。明らかに目眩ましだ。

 9日、事態を受けて開かれた民主党の「取り調べの全面可視化を求める議員連盟」(「可視化議連」会長:川内博史・衆院議員)の会合は危機感でピリピリしていた。

 というのも「可視化議連」は特捜調べの『全可視化法案』を来年の通常国会に議員立法で提出することにしているからだ。法務省(政府)が先に法案を出してしまったら「万事休す」である。

 検察審査会の闇を追及している森ゆうこ議員が口火を切った。「我々が出そうとしている『特捜部案件についての可視化法案』と法務省が出そうとしている『特捜部案件の一部可視化』は全く違う。法務省は『全部割って(※)しまってから、検察に都合のいいことしか言わなくなった所だけを録画・録音して公判で使うこともありうる』法案を出そうとしている」。

 森議員は検察のお先棒を担ぐ記者クラブメディアに釘を刺すことも忘れなかった―「マスコミが『法務省が(フロッピーを改ざんした)前田事件を反省して可視化に取り組む』と報道しているのは全くの誤り」。

 話が核心に迫り始めたところで「可視化議連」事務局長の辻恵衆院議員が意表を突いた―「法務省の役人が壁に耳をあてているからマイクのスイッチを切ろうか?」。辻事務局長は弁護士出身だけあって法務検察の手の内を知っているのだ。

「可視化議連」の会合が開かれているのは衆院第2議員会館・第7会議室。辻事務局長の指摘からやや間を置いて筆者は内側から扉を開けた。そこにいたのは、扉に耳をあてて盗み聴きしている男性だった。年は30代後半と見られる。

「法務省の方ですか?」と筆者が尋ねると「そうです」とバツが悪そうに答えた。
「何で扉に耳を当ててるんですか?法務省の人が盗聴みたいなことしていいんですか?」
「扉が厚くて話は聞こえてませんよ」
「聞こえないのに何で長いこと耳を当ててるんですか?」

 筆者が男性のIDカードを確かめようとすると、男性はスーツの両裾をつまんで隠した。まるで思春期の女の子が恥らうような仕草で。
「(あなたの)写真を撮っていいですね?」
「いや、カンベンしてください」
それでも筆者はカメラのシャッターを押した。男性は顔を隠すようにして去って行った。
 記者が壁耳するのはごく普通の光景だ。だが法の番人であるはずの法務省の役人が盗聴まがいのことをしていようとは・・・・・・。「可視化潰し」にヤッキとなる法務検察の姿がそこにあった。

                (つづく)

※割る
検事のストーリーに沿った自供に追い込むこと。



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posted by 田中龍作 at 22:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 可視化 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする