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2011年04月21日

「風評被害を防げ」 漁協と築地の自衛策

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茨城沖で獲れた魚介類の放射線量を示す一覧表。ほとんどが不検出だ。(21日、築地市場。写真:筆者撮影)


 「一年間食べ続けても健康に影響ない」と政府が言うほど不安になるのが国民心理である。

 コウナゴから基準値を上回る放射性物質が検出されたことで出荷自粛に追い込まれた茨城県漁協では、他の魚介類を風評被害から守ろうと懸命だ。利害を同じくする魚河岸も同様である。
 
 築地のある仲卸店は、茨城の漁協からファックスで送られてくる一覧表を貼り付けている。一覧表には茨城沖で獲れた13の魚介類から検出されたセシウムとヨウ素の数値がズラリ。ほとんどが「不検出」で、検出されても極微量であることが分かる(全種類問題なし)。

 買い付けにきた小売業者に“茨城沖の魚は放射能汚染されていない”ことを分かってもらおうというのが一覧表の趣旨だ。

 それでも風評被害にはかなわない。店主は「マコガレイが例年だと1500円/キロなのに今年は800円/キロ」と顔をしかめた。

 三陸沖、常磐沖の幾つかの港からは漁船が漁に出、魚が築地に持ち込まれるのだが「どこどこの●●と△△(魚介類名)はちょっとねえ」と言われて買い手がつかなかったり、買い叩かれたりするのだそうだ。

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震災以降、魚河岸の雰囲気は湿りがちだ。原発事故による海洋汚染が追い打ちをかける。(21日、築地市場:筆者撮影)


 魚河岸の社長たちの顔を曇らせるのは放射能ばかりではない。大震災がもたらす不景気で料理店が店を閉じていることも影響大だ。ある仲卸業者によれば河岸での取引は「(震災前と比べると)3割も減った」そうだ。

 水揚げが減り品薄になると値段が上がるのが相場だ。だが今回は風評被害で値段が下がっている。取引量が減り、売値も下がっているのである。当然、魚河岸の収入は大きく落ち込む。

 「そのうちここ(築地)も何軒か潰れるんじゃないか」、ある仲卸業者は呻くように呟いた。

 
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2011年04月20日

日本の原発危機管理 イタリア、イスラエルと雲泥の差

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仏アレバ社のアンヌ・ローベルジョンCEO。日本の原発市場への本格参入を目指す野望をのぞかせた。(19日、港区のホテルで。写真:筆者撮影)


 格納容器が破損した東京電力福島原発2号機から漏出する大量の汚染水を処理することになった仏アレバ社。19日、都内で記者会見したアンヌ・ローベルジョン最高経営責任者(CEO)が野望をチラリとのぞかせた――

 「我々は今、三菱重工と共に新しい原子炉を開発中です。セキュリティーとセーフティーにおいて最も先進的な炉です。いま要求されていること(安全性)を100%満たしています」。

 日本にある54基の原発は、米国ウェスティングハウスと東芝が共同開発した原子炉が主流だ。

 仏アレバ社は三菱重工を橋頭堡に日本の原子力市場に本格的に参入しようという腹づもりなのだろう。

 世界最悪の原発事故が起きたのにもかかわらず、同社は日本市場に売り込みをかけたいようだ。

 気を付けなければならないのは米国、フランスとも地震帯の上に乗っかっている国ではない、ということである。ウェスティングハウス製もアレバ製もしょっちゅう地面が大きく揺れる国で設計された原子炉ではないのだ。

 日本は大地震頻発国でありながら地震とはあまり縁がない米国の原子炉を買い続けて来たのである。

 イタリア政府は福島の事故を受けて原発計画を無期限で凍結することを決めた。イスラエルは十二分な核開発能力を持ちながら原子力発電所は作らない。イスラエルは回りを敵に囲まれ国土が狭い(日本の四国とほぼ同じ)。原発がテロ攻撃に遭ったら国土も民族も滅びる可能性がある。

 イタリアは地震が多い。イスラエルは国土が狭い。両国とも日本とよく似た事情を抱えるが、原発事故に対する危機意識には雲泥の差がある。

 イタリアとイスラエルの危機管理がしっかりしていると言うべきか、日本がおめでたいと言うべきか。  



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2011年04月18日

   「東電情報隠し」の裏で進行する放射能汚染 〜その10〜

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勝俣会長・記者会見。フリーランス記者の質問はすぐに打ち切られる一方で特定の大新聞社が質問を繰り返した。 (17日、東京電力本店。写真:筆者撮影)


 あまりにお粗末な話なので、記事にすること自体憚られた。だが「出来レース」という他ない東京電力と記者クラブメディアの質疑応答の実態を記事という形で残しておかねばならないと思い筆をとった。

 不自然なのは指名される記者の3分の一が甲新聞社ということだ。大新聞、テレビ局、雑誌など数十社と10人を超すフリーランスの記者が出席するなかで、甲社が指名される確率は異常に高い。

 会見席に数多くの記者を送り込めば指名される確率は高くなるが、指名のされ方が不自然なのである。

 17日の記者会見で筆者が勝俣恒久会長にぶつけた質問は、鈴木広報部長により途中で打ち切られたのだが、後を継いだのは甲社の記者だった。「自分の質問に積み残しがあった」という理由からだ。

 その記者が「積み残し」と言って挙手すると鈴木広報部長は「はい、質問の積み残しですね」と呼応した。甲社と東電広報との間で打ち合わせが出来ているような印象だった。

 さらに不自然なのが民放への対応だ。乙テレビの記者が「帰れるまで何年かかるのか?」と尋ねた。この日の記者会見でこの質問はすでに出ているのだ。

 以前にも乙テレビ記者の質問に対して松本・立地本部長代理があまりにもスラスラ答えるので、筆者は「事前通告を受けているのか?」と尋ねたことがある。
乙テレビの記者が質問すると松本本部長代理はすぐにメモに目を落とすのである。メモを読む目は左から右に規則正しく往復していた。松本本部長代理は否定するのだが。

 東京電力は事故の収束に向けた工程表を公表した。6〜9か月で海や大気に撒き散らしている放射性物質を閉じ込めるとしている。

 作業はひとつひとつ段階を踏んでいく。その都度、外部の厳しいチェックが必要だ。東電「事故隠し」「データ改ざん」の名手だからである。
 
 だが記者会見のありようを見る限りチェックは期待できない。天下りを受け入れてもらっていることもあって政府も東電をコントロールできない。

 案の上、東電が「工程表」の裏付け資料を政府に提出していなかったことが明らかになった。

 東電、政府、記者クラブメディアによるズブズブの構図が続く限り、将来もっと大きな大事故が起きると筆者は見ている。放射能汚染も止まらないだろう。

    
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posted by 田中龍作 at 10:48| Comment(1) | TrackBack(1) | 災害 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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