茨城沖で獲れた魚介類の放射線量を示す一覧表。ほとんどが不検出だ。(21日、築地市場。写真:筆者撮影)
「一年間食べ続けても健康に影響ない」と政府が言うほど不安になるのが国民心理である。
コウナゴから基準値を上回る放射性物質が検出されたことで出荷自粛に追い込まれた茨城県漁協では、他の魚介類を風評被害から守ろうと懸命だ。利害を同じくする魚河岸も同様である。
築地のある仲卸店は、茨城の漁協からファックスで送られてくる一覧表を貼り付けている。一覧表には茨城沖で獲れた13の魚介類から検出されたセシウムとヨウ素の数値がズラリ。ほとんどが「不検出」で、検出されても極微量であることが分かる(全種類問題なし)。
買い付けにきた小売業者に“茨城沖の魚は放射能汚染されていない”ことを分かってもらおうというのが一覧表の趣旨だ。
それでも風評被害にはかなわない。店主は「マコガレイが例年だと1500円/キロなのに今年は800円/キロ」と顔をしかめた。
三陸沖、常磐沖の幾つかの港からは漁船が漁に出、魚が築地に持ち込まれるのだが「どこどこの●●と△△(魚介類名)はちょっとねえ」と言われて買い手がつかなかったり、買い叩かれたりするのだそうだ。
震災以降、魚河岸の雰囲気は湿りがちだ。原発事故による海洋汚染が追い打ちをかける。(21日、築地市場:筆者撮影)
魚河岸の社長たちの顔を曇らせるのは放射能ばかりではない。大震災がもたらす不景気で料理店が店を閉じていることも影響大だ。ある仲卸業者によれば河岸での取引は「(震災前と比べると)3割も減った」そうだ。
水揚げが減り品薄になると値段が上がるのが相場だ。だが今回は風評被害で値段が下がっている。取引量が減り、売値も下がっているのである。当然、魚河岸の収入は大きく落ち込む。
「そのうちここ(築地)も何軒か潰れるんじゃないか」、ある仲卸業者は呻くように呟いた。
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