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2011年05月03日

福島の母 「校庭の土を舐めて下さい」

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厚労省の担当者に福島市内の小学校の土を渡す佐藤幸子さん。(2日、参院会館。写真:筆者撮影)


 これほどまでにいい加減だったのか。子供を学校に通わせる親たちの怒りは収まりがつかない。福島県の校庭利用にあたって、文科省が定めた放射線量の上限である年20ミリシーベルトは出所、根拠ともに不明であることが明らかになった。

 連休谷間の2日、「20ミリシーベルト」の撤回を求める対政府交渉が持たれた(主催:グリーン・アクション/フクロウの会/美浜の会/国際環境NGO FoE Japan)。参院会館講堂には福島県や関東一円から子供の放射能汚染に危機感を抱く父母、環境団体など約200人が参集した。

 政府側はまず厚労省、次に文科省・原子力安全委員会が出席した。福島の父母らは労働基準法と放射線管理区域に絡めて厚労省に質問した。労働基準法62条のAは未成年者が放射線管理区域で就労することを禁じている。

 内閣官房参与を辞任した小佐古敏荘・東大教授が指摘するように「放射線業務従事者でさえ年間20ミリシーベルトの被曝は極めて珍しい」のである。

 父母「保育園で放射線管理区域と同じレベルで子供たちが遊ぶことについて厚労省はオーケーなのですか?」

 厚労省「年間を通じてこの値(20mSv)を継続するということではない。数値は下がってきている」。

 厚労省自体、年間20ミリシ−ベルトの被曝は健康上良くないということを認めているとも取れる回答だ。

 「ノー(OKではない)と言って下さい」。父母たちはさらに問い詰めた。すると厚労省は「政府として決定したことなのでお答えすることはできない」と開き直るありさまだった。

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郡山市から東京に避難してきた母と子。タスキの女性は福島出身。(2日午後、参院会館。写真:筆者撮影)


 【不自然な強弁繰り返す文科省】

 20ミリシーベルトという数値を決めた、当の文科省も意味不明の答弁を繰り返した。「ずーっという意味ではなくてこれから(線量を)低くするという意味です」。

 「納得できないっ!」会場から黄色い声が飛んだ。若い母親だろう。

 さらに、文科省の強弁は親たちの神経を逆なでした。高木文科相が「除染の必要はない」と記者会見でコメントしたことについて父母らが追及すると、文科省の原子力政策担当者は「私たちの言った基準を守って頂ければいいという意味です」と言い放ったのである。

 原発震災復興・福島会議の佐藤幸子・代表世話人が一喝した。「そんなに安全だというのなら福島の土を舐めて下さいっ」。佐藤さんは5児の母である。

 佐藤さんらは交渉が始まる前、福島市内の小学校の土を厚労省と文部省の担当者に手渡しているのである。線量カウンターは30マイクロシーベルト/時を示し、ガーガーと不気味な音をたてた。1年間に換算すれば簡単に20ミリシーベルトを超える数値である。

 文科省の説明が不自然なのには事情があった。文科省は先月19日、「20ミリシーベルトで差支えない」とする原子力安全委員会の決定を受けた、としている。

 だが交渉の席で原子力安全委員会事務局を追及すると、正式な会議ではなく議事録も残していない、というのである。さらに驚いたことには「原子力安全委員会のなかには20ミリシーベルトを容認した者はいない」(原子力安全委員会事務局・課長補佐)というのだ。

 出所も根拠も不明のまま一人歩きを続ける「20ミリシーベルト/年」。

 かくもデタラメな政府決定から子供たちを守るため父母らは「避難、疎開、保養」の準備を始めた。

 ◇
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posted by 田中龍作 at 15:44| Comment(1) | TrackBack(0) | 災害 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月02日

【第一報】福島の校庭 20mSvの根拠不明確

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謝罪会見にでも臨むような神妙な面持ちの厚労省担当者。(2日午後、参院会館。写真:筆者撮影)


 福島県の保育園、幼稚園、小中学校の校庭利用にあたって放射線量の上限を「年間20ミリシ−ベルト」と定めた文科省の方針をめぐる不安と動揺は大きくなる一方だ。

 子供を学校に通わせる福島の父母らが2日、文科省方針の撤回を求めて国会内で政府との交渉を持った(主催:グリーン・アクション/フクロウの会/美浜の会/国際環境NGO FoE Japan)。

 政府からは厚労省、文科省、原子力安全委員会事務局が出席した。文科省は「ずーっと20ミリシーベルトで良いと言う意味ではない」、原子力安全委員会事務局は「安全委員会のなかには20ミリシーベルトを許容した者は一人もいない」などと回答した。

 20ミリシーベルトに決定した理由を問われた高木文科相はじめ政府高官は「専門家の意見を聞いて」などと説明していたが、根拠は不明確でいい加減なものであることが明らかになった。

 
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2011年05月01日

【会計報告 4月期】

●読者の皆様よりご支援頂いた基金
 (3月30日〜4月30日)

 297,500 円

●支出

・交通費:
電車・バス代 3,100円(数字が丸いのはパスモ購入による)      
/タクシー代  28,840円(原発事故絡みの記者会見、国会院内集会などが頻繁に行われたため、タクシーで移動しないことには間に合わず。止む無く使用。)

・被災地取材(宮城、福島)
 ビジネスホテル代 2泊 12,140円

・柏崎原発取材
  ビジネスホテル代 1泊 6,830円
 
  新幹線料金・往復2人分 39,800円
 (ボディーガード役のカメラマンの分も含めて)

 タクシー代 8,560円

・靴:9,890円(2度底を打ちかえたが、靴全体が崩れた。エジプト、東北被災地でも使用)

・電話料金:NTT 5,724円/ 携帯 21,972円

・データ通信費(Eモバイル):1,321円

・プロバイダー料:2,625円

・新聞購読料:8,085円

・ブログメンテ費:1万円、名刺デザイン料5,000円

・文房具(ボールペン、マーカー等)1,240円

・書籍代:2,640円

・衣料 (上着・シャツ・スラックス・帽子) 41,200円
 人と会うことが多くなった為、くたびれてヨレヨレだった夏物を新調した。

――支出計  208,967 円

●今月の収支(今月ご支援頂いた基金−支出)
88,533円

●前月の繰越金
 27万0742円

●今月の繰越金 (前月繰越金+今月の収支)

359,275円


●追記
 さる篤志家の読者の方から、まとまった金額を援助くださるとのお申し出がありました。面識のない方で関西方面にお住まいとのことです。原発報道を見て関心をお寄せくださいました。
近く被災地に再び入りたいと思っておりますが、中東民主化の行方も気がかりです。国内外の大がかりな取材行の原資とさせていただきたく考えております。


――以上2011年4月期 会計報告


 原子力安全委員会、原子力保安院、文科省、東京電力の記者会見(夕方の部)が25日から一本化されました。「発表する数字に齟齬が出たりするのを防ぐため」(細野豪志・統合本部事務局長)ということです。

 身一つしかなく掛け持ちが難しいフリーランスにとっては有難い面もあります。ただし合同記者会見の出席には事前登録が必要なのです。登録の事務手続きは保安院が行っています。

 「雑誌協会」「全国地方紙協会」「日本インターネット報道協会」などに記事執筆していることがフリーランスの条件となりました。

 私は「日本インターネット報道協会」の一員として首相官邸の記者会見にも出席しています。何の心配もせず登録申請したところ、保安院からあっと驚く返事がきました。「協会の一員であることが確認できない」と言うのです。

 さらに驚いたのは一員であることを確認するために「会社の概要」「業務内容」「規約」を送れ、というのです。
 それを告げてきたのは土曜日の夜11時半、締め切りは日曜日の正午です。無理難題という他ありません。

 全国地方紙協会に執筆しているN氏も同じことを言われたそうです。北海道新聞から沖縄タイムズまで40社の「会社概要」を土曜の深夜にどうやって集めろというのでしょうか。

 身分を確認するのなら記者証や執筆記事で十分であるはずです。官邸も外務省もそうでした。

 知人のフリーランスたちと連絡を取り合っているうちに『謎』が判明しました。

 東電の記者会見で大人しいフリーランスのA氏は「会社概要」を送れ、などとは言われず、早々と“当選”が決まっていました。

 無理難題をつきつけられたN氏や私は東電から嫌がられる質問を繰り返しています。選考基準は東電が決めたと考えるのが妥当ではないでしょうか。「A氏」と「N氏、田中」を区別するものは東電記者会見での“お行儀”しかありません。

 結局、政治折衝によりN氏や私は救済され合同記者会見に出席できることになりました。東電の思惑通りには行かなかったようです。

 東電、霞が関、自民党、民主党電力族、記者クラブメディアが40年間に渡って刷り込んできた「原発安全神話」に切り込むのは容易ではありません。

 それでも読者の皆様が支えて下さる限り追及の姿勢は変えずに頑張る所存です。今月もご支援本当に有難うございました。

              2011年(平成23年)4月30日
                   田中龍作

posted by 田中龍作 at 10:08| Comment(1) | TrackBack(0) | 会計報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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