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2011年04月23日

自然エネルギーの普及阻む勢力と戦う孫正義氏

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孫氏は原発の是非を有権者に問う「原発国民投票」も提案している。(22日、ソフトバンク本社。写真:筆者撮影)


 「通信の自由化」に業績を残した男が今度は「エネルギーの自由化」を目指す。津波被災者のために100億円を寄付したソフトバンクの孫正義社長は「自然エネルギー財団」を近く創設する。

 チェルノブイリと並んで世界原子力史上最悪となった東京電力・福島原子力発電所の事故は、環境破壊にとどまらず日本経済をもドン底に突き落としかねない。

 東京電力は国民を不安にさせないために誰もが納得する情報を開示する義務がある。だが過去の度重なる「事故隠し」「データ改ざん」が象徴するように、東電は事実を表に出さないことを“モットー”とする。多額の広告費や接待で飼いならされた記者クラブメディア(新聞・テレビ)は、東電の隠ぺいに手を貸してきた。

 情報開示の窓口となるはずの東電記者会見でもしインターネットがなかったら、これまで同様国民は真相を知らされないままだっただろう。

 記者会見で威力を発揮しているのがU-STREAMだ。ご存知ソフトバンクが手がける情報ツールである。USTはフリーランスが追及する「中国接待旅行」、「事故のディテール」など東電が隠したがっていることを伝えてきた。記者クラブメディアが黙殺してきたことばかりだ。

 東電福島原発事故の真相究明にUSTつまりソフトバンクが果たした役割は大きい。「情報革命にわき目を振らずに来た」と話す孫氏は、この一か月間悩んできたという。原発は必要か止めるべきか、で。

 エネルギー問題に首っぴきで取り組んだ結果、「今、日本人を不幸にしているのが原発問題」、「批判ばかりしていてもしょうがない」として「自然エネルギー財団」を立ち上げることを決めた。

 アメリカでは昨年から太陽光による発電コストが原子力発電を下回るようになった。孫氏は世界中の科学者100人を集めて太陽光発電を中心に自然エネルギーの普及を目指す。

 米国に踊らされた日本政府は国策として原子力発電を進めてきた。これほどの大事故を招いていながらその姿勢を変える気配はない。

 「自民党は電気事業連合会の言いなり、民主党は電力総連に骨抜き。メディアは電力会社から広告漬け。(そうしたなか)自然エネルギー計画をどう着地させるのか?」、ジャーナリストの上杉隆氏が質問した。

 孫氏は「原発は国民の一番の関心事。啓蒙してゆくこと。これが王道」と答えた。

 心配症の筆者は、原発に反対していた佐藤栄佐久・前福島県知事に孫氏が重なる。佐藤前知事の逮捕容疑は収賄だが、佐藤氏自身「原発反対も逮捕理由のひとつ」(18日、日本外国特派員協会)と捉えているのである。

 政権はあらゆる規制を駆使して自然ネルギーの普及を妨害してくるだろう。マスコミは孫氏を絡めてネガティブキャンペーンを張ってくるだろう。

 筆者は上記(「佐藤前知事」「政権による妨害」「マスコミのネガキャン」)を説明したうえで孫氏に「具体的に対抗策を考えているのか?」と聞いた。

 孫氏は「損害を被ることもあるが、それでも正義を通さなければならない時がある」と決意を示した。

 既得権益を打破しようとすると政権、霞が関、記者クラブメディアが立ちはだかる。その繰り返しだった。だが原発は日本が吹き飛ぶほどの危険性を持つ。「子供たちのためにも日本を残さなければならない」とする孫氏に孤軍奮闘を強いてはならない。



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posted by 田中龍作 at 16:29| Comment(2) | TrackBack(0) | エネルギー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月21日

「風評被害を防げ」 漁協と築地の自衛策

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茨城沖で獲れた魚介類の放射線量を示す一覧表。ほとんどが不検出だ。(21日、築地市場。写真:筆者撮影)


 「一年間食べ続けても健康に影響ない」と政府が言うほど不安になるのが国民心理である。

 コウナゴから基準値を上回る放射性物質が検出されたことで出荷自粛に追い込まれた茨城県漁協では、他の魚介類を風評被害から守ろうと懸命だ。利害を同じくする魚河岸も同様である。
 
 築地のある仲卸店は、茨城の漁協からファックスで送られてくる一覧表を貼り付けている。一覧表には茨城沖で獲れた13の魚介類から検出されたセシウムとヨウ素の数値がズラリ。ほとんどが「不検出」で、検出されても極微量であることが分かる(全種類問題なし)。

 買い付けにきた小売業者に“茨城沖の魚は放射能汚染されていない”ことを分かってもらおうというのが一覧表の趣旨だ。

 それでも風評被害にはかなわない。店主は「マコガレイが例年だと1500円/キロなのに今年は800円/キロ」と顔をしかめた。

 三陸沖、常磐沖の幾つかの港からは漁船が漁に出、魚が築地に持ち込まれるのだが「どこどこの●●と△△(魚介類名)はちょっとねえ」と言われて買い手がつかなかったり、買い叩かれたりするのだそうだ。

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震災以降、魚河岸の雰囲気は湿りがちだ。原発事故による海洋汚染が追い打ちをかける。(21日、築地市場:筆者撮影)


 魚河岸の社長たちの顔を曇らせるのは放射能ばかりではない。大震災がもたらす不景気で料理店が店を閉じていることも影響大だ。ある仲卸業者によれば河岸での取引は「(震災前と比べると)3割も減った」そうだ。

 水揚げが減り品薄になると値段が上がるのが相場だ。だが今回は風評被害で値段が下がっている。取引量が減り、売値も下がっているのである。当然、魚河岸の収入は大きく落ち込む。

 「そのうちここ(築地)も何軒か潰れるんじゃないか」、ある仲卸業者は呻くように呟いた。

 
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2011年04月20日

日本の原発危機管理 イタリア、イスラエルと雲泥の差

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仏アレバ社のアンヌ・ローベルジョンCEO。日本の原発市場への本格参入を目指す野望をのぞかせた。(19日、港区のホテルで。写真:筆者撮影)


 格納容器が破損した東京電力福島原発2号機から漏出する大量の汚染水を処理することになった仏アレバ社。19日、都内で記者会見したアンヌ・ローベルジョン最高経営責任者(CEO)が野望をチラリとのぞかせた――

 「我々は今、三菱重工と共に新しい原子炉を開発中です。セキュリティーとセーフティーにおいて最も先進的な炉です。いま要求されていること(安全性)を100%満たしています」。

 日本にある54基の原発は、米国ウェスティングハウスと東芝が共同開発した原子炉が主流だ。

 仏アレバ社は三菱重工を橋頭堡に日本の原子力市場に本格的に参入しようという腹づもりなのだろう。

 世界最悪の原発事故が起きたのにもかかわらず、同社は日本市場に売り込みをかけたいようだ。

 気を付けなければならないのは米国、フランスとも地震帯の上に乗っかっている国ではない、ということである。ウェスティングハウス製もアレバ製もしょっちゅう地面が大きく揺れる国で設計された原子炉ではないのだ。

 日本は大地震頻発国でありながら地震とはあまり縁がない米国の原子炉を買い続けて来たのである。

 イタリア政府は福島の事故を受けて原発計画を無期限で凍結することを決めた。イスラエルは十二分な核開発能力を持ちながら原子力発電所は作らない。イスラエルは回りを敵に囲まれ国土が狭い(日本の四国とほぼ同じ)。原発がテロ攻撃に遭ったら国土も民族も滅びる可能性がある。

 イタリアは地震が多い。イスラエルは国土が狭い。両国とも日本とよく似た事情を抱えるが、原発事故に対する危機意識には雲泥の差がある。

 イタリアとイスラエルの危機管理がしっかりしていると言うべきか、日本がおめでたいと言うべきか。  



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posted by 田中龍作 at 13:46| Comment(1) | TrackBack(0) | 災害 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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